我らが人生に手向ける歌 [ブラジル]
サンバをよく聴いた1年でしたから最後もサンバで。
今年一番感激したアルバム「Meninos Do Rio」にも参加していたジャイール・ド・カヴァキーニョの2002年のアルバム。2006年に83歳で亡くなっているので、遺作になります。
ポルテーラのサンビスタでしたから、モナルコの先輩ってことになりますね。ポルテーラのアルバムは何枚かあるのでそこでの録音はありますけど、単独アルバムはこれ1枚かもしれない。エスコーラ系のサンバに心酔したマリーザ・モンチのレーベルからのリリース。
「Meninos Do Rio」に参加していた人の中ではもっとも素朴な歌を聴かせていた人で、素朴と言えば聴こえは良いけど、要は素人丸出しなヘロヘロな歌でして。でもこれがまた良いんですよ。味わい深いったらありゃしない。
全曲自作。サンビスタとしての長い人生の中で残した名曲でしょうか。ジャケでも誇らしげにつま弾く名前の由来となったカヴァキーニョ。
こういうエスコーラ系のサンバには新しい言葉を見つけるのが難しい。
特別なことは何もしてないから。でも裏返せばすべてが特別な輝きを放っているともいえるわけです。僕らの人生一つひとつが特別なように。
そんな我らが人生に手向ける歌が詰まったアルバム。またひとつ宝物が増えました。
年間ベスト2018[映画部門] [雑記]
春風薫るメロウネス [ブラジル]
このレイラ・ローザの「Recomeço」を聴いたのは今年の初頭だったか。
ストリーミングで聴いた時に記事にしたけれど、すぐにCDを買ってきて、結構良く聴きました。最近またよく聴いていて、改めて良いアルバムだなと。ベストに選出してもよかったな。
春風のような爽やかなメロウネスがなかなか得難い味わいなんですよ。
記事タイトルを「春風薫るメロウネス」なんてしてから、タイトルの意味を調べてみると「新しい始まり」。イメージ的には遠くないな。
ミナスでもう結構長く活動する女性らしく、コンボ・スタイルのバックにホーンが混じる。エレピやヴィブラフォンも良い感じ。ずっと一緒に活動する仲間なのかグルーヴがフレキシブル。
聴きながら書いてるけど、いやほんと良いアルバムだなぁ。一曲目のメロウネスにもう蕩けそうになる。もの憂いメロウネスじゃなく春風が頬を撫でるような。これも36分という短さも良かった。
冬はまだ始まったばかり。
年明けてもこれを聴きながら遠い春を待つでしょう。
Apple Music Playlist 2018.12.28 [Astral's AM Playlist]
Gucci Main:Evil Genius
21 Savage:i am > i was
そんなわけで、最近のヒップホップに興味が出たので最近リリースされたばかりの、この2枚を聴いてみました。図らずも2枚とも所謂トラップでした。まさにイマドキのラップ作品ど真ん中ですねぇ。これを楽しめればずっぽりハマれるんですが、そう簡単でもない。
イマドキのR&Bを聴いてれば、少しはトラップやその手のラップも耳に入ってくるので、ある程度聴いたことはあるんですが、こうしてアルバム一枚ってのはやっぱりちょっと厳しいかなぁ。でも興味を持った時点である程度好きになってるのかも?という気持ちはあるので興味深く聴きはしました。トラップってのは門外漢には暗いなぁとしか思えないのも確かなんですけど。ついでに同じような曲ばかり?とも。
「文科系」を読んで来年はラップを月に一枚くらい購入してじっくり聴いてみようかと思ったんですけど、どうしようかな。
「文科系」を読んで [本]
最近図書館で長谷川町蔵+ 大和田俊之共著の「文科系のためのヒップホップ入門2」を借りてきて読みました。
「1」の方も以前読みましたが、すっごい面白いんですよ。ラップに興味のある人もない人もおすすめの本です。
前作はラップの創成期から現在までを追うだけでなく、ラップという音楽の独自性というか、音だけきいてるだけではわからない魅力をわかりやすく解説してくれて、学ぶところが多かったですね。
そこに登場する作品やラッパーはけっこう知っている人も多く、聴いたことのある作品もあったので、それほど感化されてラップを聴きまくるとかってことはなかったんですが、今回は2012-14年あたりの短期間の動向を門外漢にも詳しく解説してくれていて、かなり刺激を受けてラップ・モードというか聴いてみたい作品がいっぱいでてきました。
うちにも一応はラップのCDも少しはありますけど、ほぼ90年代どまりなので、先日のプレイリストにもあったドクター・ドレーなんかを引っ張り出して聴いたりして。それからしてが古すぎるんですけど。でもドレーはケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークの後見人でもあるしね。って言い訳です。
とりあえず備忘録として、あの本を読んで思ったことを徒然に。
あとでじっくり考えてみたいことなのであまり、まとまりなく記しておきます。
あの2冊は日本でもアメリカのヒップホップをもっと聴かれるようにと作られたものだけど、はからずも日本でアメリカのヒップホップがいまひとつ聴かれない理由も明らかになっている。
それは本にも書かれてますけど、やはり言葉の比重の大きい音楽だということ。
ヒップホップは音楽じゃないという言葉もある通り、その「場」というかシーンを理解してないと楽しめない。わけじゃないが、魅力の多くの部分が削がれてしまうこと。一人二人聴いただけじゃしょうがない音楽みたい。
柳樂光隆氏との懇談の中に面白い記述が。
ジャズは60年代にリロイ・ジョーンズなどによって黒人音楽とアイデンティファイされた音楽だということ。なるほど。公民権運動などの時代の中でジャズが文化的拠り所として必要とされたってことかしら。
きゃりーぱみゅぱみゅもアメリカでCDだすならループの感覚を取り入れなきゃダメとか。
確かにそうなんだろう。でもスポティファイの各国チャートをみると日本だけガラパゴス的なJ-POP隆盛を見ることができるのは、音楽も欧米的グローバリズムに侵されていく他国を見れば、逆に日本って面白いとも思う。
他にも色々あったはずなんだけど、読み終わって1週間くらいたってるから忘れちゃったな。また思いだしたら記します。
今年はよく本を読んだ [本]
ブログの記事にはほどんど出来なかったけど、今年はかなり本を読んだ気がする。
NHKでドラマ化された上橋菜穂子「精霊の守り人」の原作を夢中で読んだのも今年の初めだった。
あと何より昨年からはまっていた藤沢周平を片っ端から読みました。
昨年は所謂剣客ものを読んでスカッとしてたんですが、今年に入ってからは市井ものも読んでみたら、これまた素晴らしくって。ほんとハマって片っ端から読みまくりました。
初期の作品はかなり暗いので最初敬遠してたんだけど、やはり作家の骨格となった力作が多く、感銘をうけましたね。感銘ってこういう時使うんだなってくらい。
おすすめはいっぱいありますが、初期の短編集「又蔵の火」は暗く悲劇的な物語が多いけど、どっしりと胸に残りました。もちろん直木賞受賞作を含む「暗殺の年輪」も。市井ものなら「橋ものがたり」や「暁のひかり」。まぁどれもおすすめですけどね。「蝉しぐれ」はやっぱ名作だし、「用心棒日月」シリーズは最高のエンターテイメントだし。
時代ものの小説なんて今までまったく興味なかったんだけど。
藤沢周平をあらかた読みつくして、最近は時代小説の大家である山本周五郎や柴田錬三郎なんかも読みましたね。
でもやっぱ藤沢周平が一番面白いと思うな。正月休みによろしければ。
来年は読んだ本についても備忘録として映画みたいに軽くでも記すことにしよう。
Today's choice 2018.12.25 [Today's choice]
Today's choice 2018.12.24 [Today's choice]
ネオンの輝きを映すガフィエイラ・サウンド [ブラジル]
最近ブラジルのバンドリン奏者アミルトン・ジ・オランダの4枚組のボックスがリリースされた。4枚とも名バンドリン奏者ジャコー・ド・バンドリンに関んする曲を演奏したものみたいなんですが、僕はそもそもジャコー・ド・バンドリンをろくに聴いたことないんですよ。
それでアミルトンで思いだしたのが、2015年のアルバム「Bailo Do Almeidinha」。
これ最高にカッコよかったんですよね。でもストリーミングでちょっと聴いただけですっかり忘れてた。今頃CD購入しました。
ショーロじゃなくてジャズ・コンボをバックにしたガフィエイラ・サウンドが最高にスウィンギーで、カラフルなイラスト・ジャケを体現するがごとく躍動感たっぷり。
ジャズもショーロも大好きな僕のためにあるようなアルバムです。
超絶技巧もダンス・フロアーを沸かせる飛び道具。
アコーディオンがほっこり流れる曲もあり、この音楽のカラフルさは都会のネオンの輝き。気楽に楽しめるのに奥は深い。これから頻繁に手が伸びるであろう傑作です。
ナチュラル・メイクのポップ・クイーン [ポップ/ロック]
iTunesストアを覗いたらクリスマスだからなのか、売れ筋の期間限定セールをしてた。ぜーんぶ1300円以下ってことで、ダウンロードでもそういうことするんだな。歓迎歓迎。エラ・メイも千円ぽっきりだ。
最近はヒップホップに興味があるのでニッキー・ミナージュやトラヴィス・スコットあたりいっちゃおっかなぁと思ったんですが、結局アリアナ・グランデなんか買っちゃいました。
結局そこかよ!って話ですが。でもニッキー・ミナージュもいるし。
なんか普通のイマドキなポップスが聴きたかったんですよ。
ほんとはJ-POPあたりで欲しかったんだけど、見つからなかったので。
スポティファイでは各国で今よくストリーミングされている曲のランキングを見ることができますが、ここ最近はずっとアリアナの「thank U, next」が世界中で良く聴かれてて、良い曲なんです。最近出た「imagine」もチルウェイブど真ん中で良いんですよね。
そんなわけで個人的にアリアナ株が上昇中だったのもあり。
アリアナって90年代にマライアがいたポジションに今いる人ですよね。
ポップ・アイコンっていうか。可愛いしブロードウェイの子役出身ってことで歌唱力も確かで、マライアばりのハイトーンも聴かせたりするし。
この「Sweetener」も良いアルバムなんですよ。
半分くらいがファレル・ウィリアムスの仕事で、今頃ファレル?って気もしますが、新しすぎないポップが良い感じ。その他のマックス・マーティンあたりの仕事も安定感ある仕上がり。
冒頭アカペラで短い一節の「Raindrops (An Angel Cried)」をイントロダクションに、ミディアム・グルーヴが心地よいファレル自身も参加の「blazed」、ニッキー・ミナージュのラップもクールな「The Light Is Coming」、浮遊感漂うレゲエ風味な「R.E.M」と。派手過ぎないのが私好み。
そんなイマドキな曲のせいで「no tears left to cry」のような王道も一層映えるわけです。
ただひとつ「Thank You, Next」が入ってないのが残念だけど、それはアルバム後のシングルなんだからしょうがない。
アリアナといえば昨年だったかのテロ事件ですが、とりたてて政治的なことに関心がなかったとしてもあんなことが起きれば動揺しますよね。天地が逆様になるような経験をしても自分らしくってことかな。このジャケは。
2018年グローバル・ポップ一番のポップ・クイーンの新作はナチュラル・メイクが美しい快作です。最近のシングルも買うか。