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そうだけど、何か? [ポップ/ロック]

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アリアナ・グランデの「thank u, next」を聴きまくってたのは、もう5年も前か。2019年のベストにも選んだんだけど、あのどよーんとしたトラップR&Bをよくあれだけ聴いたもんだなと今になれば不思議にも思う。いや今でも好きなんだけど、けして明るいポップスじゃないもんね。
あのアルバムは同シングルが特大ヒットになったので、前作「Sweetener」から半年ででたアルバムだった。あのツアーのライブは配信リリースだけだったけど、ネットフリックスで映像も見れたし、諸々印象深い。

でも2021年の前作「Positions」は、あんまり聴かなかったせいか全然覚えてない。
それでこの新作「eternal sunshine」ですよ。
トラップなところはもうなくなって、当たり前か。「スゥイートナー」あたりのポップさが戻ってきた。先行シングル「yes, and?」がキャッチーでラジオでも良く流れていて、アリアナ戻ってきたなと。確か映画かなんかやってたんだっけ。タイトルも「thank u, next」みたいな話し言葉でね。

いつもどおりマックス・マーティンをソングライティング・パートナーに、フックの効いた曲が揃っていて、トレンドに目配りしつつ、普遍的なポップスにもなっていて、テイラー・スウィフトが巨大なポップ・スターになってしまいましたが、僕はアリアナ派です。
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吐く息の白さに [ポップ/ロック]

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シンガーソングライター系の音楽はかつていっぱい聴いたので、もう一杯・充分って感じだったんだけど、サラ・ジャローズの新作「Polaroid Lovers」はなぜかとても気にってCDも買ってしまった。

この手のアルバムを何度も聴くなんてもう10数年ぶりだと思うんだけど。どこに惹かれたのか自分でもよくわからないので、こうして聴きながらあれこれ記していけばわかるだろうか。

冒頭電子音に導かれるように始まるコンテンポラリーなフォーク・ロック「Jealous Moon」。疾走感があってオープニングに相応しい。
最初聴いた時、都会的なフォークの伝統をひいてるような感じでスザンヌ・ヴェガとか思い出した。
続く「When The Lights Go Out」は出だしのメロディにコール&レスポンスのようにたたみかけるようなところが、フォーキー・ソウルでこれも良い。
3曲目「Runaway Train」もフックが効いていてキャッチーで良い。本作はプローデューサーでもあるダニエル・タシアンなど全曲共作していて、それが良い方に作用しているんでしょう。

彼女の過去作は全く聴いたことがなく、マンドリンの名手でブルーグラス系の人という印象しかない。実際本作は過去作とは打って変わってと言う感じの作品のようで、これまでの作品が好きな人には評価がわかるのかもしれない。

本作発表後のニューヨークでのライブ映像がYoutubeにあって、それを見ると彼女はアコースティック・ギターを弾いて歌ってると思ったら、オクターブ・マンドリンだった。本作でも印象的なソロを取っていて、彼女の個性にもなってる。
彼女はもう移ってしまったようだけど、以前、ニューヨークにようで、ひんやりとした都会の空気が伝わるような「Columbus & 89th」も良いなぁ。全体的に都会の雑踏に木霊しているような音像も心地よいんですよね。

コロナを経て人との繋がりに飢えていたようで、共作を含め外向的な作品なところが、個人的になりがちなシンガーソングライター作品に飽いていた僕にも響くものがあったのかもしれない。それに自作に拘らないトラディショナルなところから出てきた人だからというのもあるだろう。

冬に聴いているからか、吐く息の白さに人のぬくもりを感じるような印象を受ける作品だ。
不思議と良く手が伸びることに自分で驚きながら何度も聴いてます。

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フィービ・スノウと再会 [ポップ/ロック]

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今年よく聴いた旧譜にフィービ・スノウの「Second Childhood」があります。。
なぜ今頃フィービ・スノウかっていうと、ちょうど昨年の今頃、愛聴盤のひとつである「New York Rock & Soul Revue」を聴いたんですよ。ドナル・フェイゲンが音頭を取ったライブ盤ですけど。
あれにフィービも参加していて、あらためてフィービ・スノウいいなと思って。

フィービ・スノウは音楽を熱心に聴き始めた頃に70年代の作品はひととおり聴いていて、ひさしぶりにでた89年の「Something Real」は新譜で買ったと思う。でもそんなにハマらなかった。当時の僕の趣味からするとたぶん洗練されすぎてたのかな。もっと田舎っぽいもの素朴な感じのもののほうが好きだったから。

それで30年ぶりくらいにまた興味をもって。サブスクで色々聴いて、一番気に入ったのがこの76年の2nd「セカンド・チャイルドフッド」でCDも買った。一曲目のサックスがデヴィッド・サンボーンで、当時の東海岸ファースト・コール・ミュージシャンを擁したフィル・ラモーンのプロデュースが丁寧で素晴らしいんですよ。
大都会の音楽って感じでよく聴きました。ヴィブラートの聴いた歌声が大都会ニューヨークの夜のしじまに溶けていくようで、夜灯りを落として聴くと良いんですよねコレが。

特にお気に入りは「Sweet Disposition」。ハワード・ジョンソン編曲のチューバ・クインテットがカッコよくって。彼らはタジ・マハールのライブ盤にも参加してましたよね。
シュープリームスのカバー「Going Down For The Third Time」もファンキー&ブルージー独自に染め上げ、ラストはガーシュイン「There's a Boat That's Leavin' Soon for New York」。これもまったくのオリジナルな響きですごい人だな。

ジャケも素敵なのでレコードで欲しいなとマジで思ってます。
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曲の中で描かれるドラマ [ポップ/ロック]

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ひさしぶり買ったロック。
ウォーレン・ヘインズ率いるガヴァメント・ミュールの新作「Peace... Like a River」。

一時期期待していたテデスキ・トラックス・バンドはかつてのサザン・ロックの焼き直しに終始し、すっかり幻滅し興味を失ってしまったんですが、デレク・トラックスは才能を無駄にしてると思いますよ。いやほんとに。「レイラ」を丸ごとがカバーして「Layla Revisited」って、そもそもお前らが作ったわけじゃないだろ!って、これくらいにしとこう。

ウォーレン・ヘインズは60年生まれで、70年代ロックをリアル・タイムで聴いて育って80年代から活動を始めたからか、同じようなことやっても焼き直し感がないんですよ。変な憧れがないせいもあるだろうし、地続きで音楽を前進させている。

このアルバムがバンドの何枚目かも知らないけど、77分もある大作ながら飽きさせない。7分を超える曲が4曲もあり、比較的長尺な曲が多いのに飽きずに聴けるのは、良い曲が揃ってるのもあるけど、アレンジが上手い。

その最たるものが9分を超える3曲目の「Made My Peace」。
長くても起伏があって、長々とギター・ソロが続いたりせずメリハリがある。ストリングスを入れたりして曲の中でドラマを作るのが上手い。

湿地帯をのたうつようなブルーズ・ロック「Shake Our Way Out」はビリー・ギボンズがサビをひと唸り。どうせならギターを弾いてもらえばよかったのにと思わないでもないけど、バンド四人の演奏能力がやたらと高いので、ゲストはヴォーカルのみ。

ホーン・セクションもはいったヘヴィなサザン・ファンク「Dreaming Out Loud」ではアイヴァン・ネヴィルとルーシー・フォスターがソウルフルな歌を添え、ビリー・ボブ・ソーントンを迎えた「The River Only Flows One Way」はレゲエ。レゲエは珍しくなくとも間奏やエンディングでダブまでやるのはなかなかに冒険的で、ハードボイルドなサザン・レゲエといった趣。この曲に一番感心しました。

僕が買ったのはボーナスEPのついた2枚組で、そちらも含めて聴きごたえたっぷりで、ひさしぶりにロックを堪能しています。
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音楽家としての器の大きさ [ポップ/ロック]

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年を経るごとにドクター・ジョンの音楽が好きになる。
だから結構来日してたのに、一度もライブを見れなかったのが、悔やまれる。

本作はモントルーに出演した時の記録で、86、93、95、04、07、11、12年の録音を、ひとつのライブとして聴けるように並べてある。声が変わらないのと、バックのバンドも基本LOWER9-IIを中心としたメンツなので、年月の差は感じませんね。11年にはジョン・クリアリーが、12年にはトロンボー・ショーティも参加してます。

冒頭数曲のニューオリンズ・ピアノ弾き語りは、まだ40代だからこその円熟とは違うドライブ感に圧倒されます。時にソロ、時にコンボ編成、時にホーン・セクションも加えてとCDめいっぱい80分近くたっぷり収録。

確か公式のライブ作はこれまで97年の「トリッピン・ライブ」だけだったと思う。あれもそうだけど、ドクター・ジョンはライブとスタジオ盤はわけて考えてたみたいですね。
ここでも自作の曲は2曲しか入ってないし、新作を出してもそこからはあまり演奏してなかったみたい。ライブはライブでNOLAクラシックを交えての演奏はニューオリンズ・ミュージックの継承者としての矜持を強く感じさせるものです。
本作を聴いてた感じたのはだからこそ音楽家としての器の大きさ。エリントンもコール・ポーターの曲も自分色に染め上げる。

ドクターのスタイリストぶりも楽しめる写真もたっぷり、ブック形式の装丁もカッコいいナイスな発掘ライブ作です。
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英国人的米国黒人音楽解釈 [ポップ/ロック]

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チャズ・ジャンケルの新作「FLOW」。ソロ作としては13年ぶりだそうで。
僕にとってはもちろん、イアン・デューリーの相棒なわけですが、一般的にはクインシー・ジョーンズがカバーした「愛のコリーダ」の作者としての方が有名かもしれません。
ソロ作としては70-80年代にかけて数枚、その後は2000年代に入ってから、ブロックヘッズの活動と並行して、中には普通にハード・バップ的なジャズ作もありました。
ここ数年は二か月に1曲くらいに配信リリースしていて、それだけで20曲くらいにはなると思う。新作はそれらの中から最近の曲とプラスアルファでアルバムに纏めたようだ。

アルバムは軽快なポップ・ファンク「Water」でスタート。グッと腰を落とした「Key to Life」、ラテン風味も交えた「Believing」と、タイプの異なるファンク・ナンバーで畳みかけ、トロピカルなメロウ・ソウル「On This Beautiful Day」で一息して、四つ打ちファンクの「Bodies Without a Soul」と、佳曲が揃ったアルバムでいいじゃん!っと思ってたら、本作はここから面白く展開します。

6曲目のインスト「Dreamtime」は、ピコピコとシンセ・リフが鳴るテック・ハウスなんですねぇ。
ブロックヘッズとしてのライブ活動もあるし、現役感は問題なかったですが、最近の配信リリース曲の中にはクラブ・ミュージック的なものもあって、気の若い人だなぁと思ってたんですよ。

続くスムース・ジャズ的なギターが響く「As Far as I Can See」はアンビエント・ハウス。その次の「Deep Water」は歌入りでサックスやピアノ・ソロも聴けるジャジー・ハウス。

時々ファルセットも交えるチャズのヴォーカルは上手くはないけど、すごーく贔屓目に見れば、ドナルド・フェイゲンのような味わいも感じられる。でも本人の歌だけだとアルバム一枚はさすがに厳しい。

本人もそれはわかっているのか、クラブ・ミュージック・パートを挟んで後半はゲスト・シンガーも迎えて「Meet Me In The Middle」はネオ・ソウル、「Time Shows the Way」はレゲエと多彩に展開。
最後はお得意の80’sファンク「Turn It Around (TT)」で幕を閉じます。

チャズなりのブルースへのアプローチ「Mitts Blues」なんかを聴くと、過去の作品も含めてこの人の音楽は、いかにもイギリス人の米国黒人音楽解釈だなと感じられます。そんなところも含めて僕好みのツボを押してくれる秀作。


これ5月に出たんだけど、CDが6月に出るってんで待ってたんですよ。
でも発売日が近づくと2週間くらい延期されて、それが2度3度どころか、10回以上も続いて。通販でまとめ買いでオーダーしてたもんだから、この1枚のせいで他も届かなくってまいりました。
それで9/29だったのが、10/6になり、遂には11/3になり。さすがに諦めましたよ。CD出す出す詐欺だなこりゃ。
参加ミュージシャンを確認してから、ブログにと思ってたんだけど。
サックスにブロックヘッズからデイブ・ルイスとかが参加してるらしいです。
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ボニーの一番のフェイバリット盤 [ポップ/ロック]

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ボニー・レイットはおよそ駄作というのがない人だと思うんだけど。まぁ不調の時もあったけど、基本自分に合わないようなことはしない人だしね。
代表作は72年の2nd「Give It Up」だと言うのに何の異論もないんですけど、やっぱり音楽ってリアル・タイムで聴いたものに思い入れができるもので、僕の一番のフェイバリット作は2005年の「Souls Alike」です。

実際このアルバムはほんと良い曲が揃っていて、冒頭の「I Will Not Be Broken」からはじまり、完熟のルーツ・ロックが味わえます。先日取り上げたジョン・クリアリーがレギュラー参加していた頃で、かれが提供した「Love on One Condition」「Unnecessarily Mercenary」はばっちりニューオリンズ印のR&B。

タイトルが歌い込まれる「Deep Water」は珍しくプログラミングを取り入れ、ヒップホップに対応。最近のアルバムではこういう新規なものを取り入れるってこともうなくなっちゃいましたけど、この頃はまだ時代の音と向き合っている感じもあって、そこにも惹かれていましたね。ちゃんとらしさを保った取入れ方が流石。

一番痺れるのは「Trinkets」「Crooked Crown」とクールにグルーヴする2曲が続くあたり。好みが渋すぎる?ラストのジャジーな「Bed I Made」も深い余韻を残す私的名盤なり。
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惚れこんで飛び込んだニューオリンズ [ポップ/ロック]

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ジョン・クリアリーはもう61歳というからもうベテランもベテランで、もちろん良く知っていますけど、実際アルバムをちゃんと聴いたのは、サブスクで2018年作「DYNA-MITE」が初めてでした。あれは実際良いアルバムでしたね。

だからサイドメンとしての印象が強かったんですが、ここ数年ニューオリンズの音楽があらためて魅力的に響くようになったこともあり、来日記念盤として出た日本独自企画のベスト盤をゲット。
普段ベスト盤ってあまり買わないんですけど、本作は入所困難なEPからの曲も含まれているってことで、ベスト盤を編むときはここらへん重要ですよね。

これまでリリースしたアルバムからまんべんなくってわけでもないですが、冒頭の昨年7インチシングルででたワイルド・マグノリアスのカバー「ニュー・カインダ・グルーヴ」からご機嫌な不滅のニューオリンズR&Bを心置きなくかましてくれます。

アラン・トゥーサン曲はじめニューオリンズ・クラシックはいわずもがなですが、手練手管で演奏してないからだろう、手垢に塗れた感じなく新鮮。惚れこんで飛び込んだ彼の地の音楽への愛情が溢れまくっている。
もちろんニューオリンズ風味だけでなくラテン・テイストなどイギリス人らしいミクスチャー感覚も感じられ、ハイ・サウンドな「ブラザー・アイム・ハングリー」のソウル・フィーリングも本格的、変わり種のフリーのカバー「オールライト・ナウ」もらしさ全開でカッコいい。

ボニー・レイットのアルバムなどでも自作曲が取り上げられてましたが、ソングライターとしてもルーツ・ミュージックの旨みをたっぷりしのばせた良い曲が揃ってるし、ベスト盤の鏡のような選曲に頬もゆるみっぱなしですな。オリジナル・アルバムもちゃんと聴かなきゃな。
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滋味深い成果 [ポップ/ロック]

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昨年、聴いてなかったロック系のアルバムを聴いてく中で、ブルース・コバーンも聴いて、それから今年に入ってからもコバーンのアルバムをよく聴いてました。といっても数枚しか持ってないですけど。
僕は決してコバーンの良い聴き手ではないけど、いつでも信頼できる音楽家という印象なんですよね。最近は特にそう思います。

コバーンの作品を全部聴いてるわけじゃないが、というかその半分も聴いてないんだけど、アクースティックだったり、ジャズ的だったり、ロック的だったり、と音楽的な変遷はあるにせよ、その時々でそれらの音楽的成果を残した人だと思う。この時代のアルバムは今聴くと厳しいなというのがあまりない。リチャード・トンプソンと似てる。ギターの名手でもあるし。たぶんあまりセールスとかを気にしなくてよいからかもしれない。固定ファンがちゃんといてヒット曲を要求されるわけでもないし。

コバーンの新作を聴くのは2011年作「Small Source of Comfort」以来。あのアルバムは僕の中で震災と強く結びついてしまった思い出深いといっていいのかわからないけど、そんな作品でした。その後2枚くらいあったと思うけど、それらはスルーしての新作「O Sun O Moon」。

自身の弾くアクースティック・ギターを中心としたアンサンブルの穏やかなアルバムとなっていて、プロデューサーを務めるのは盟友コリン・リンデン。録音はナッシュビルで行われていて、そのせいかベースにはライル・ラヴェットのラージ・バンドに在籍もするヴィクター・クラウス、ドラムは90年代から付き合いのあるゲイリー・クレイグ。コーラスのサラ・ジャローズ、アリソン・ラッセル、ショーン・コルヴィンなどがささやかな華やかさを添えている。

アクースティックながらドライブ感のある「On a Roll」で始まる本作は、長いキャリアの中で培われた音楽的成果が滋味深く各曲の中に溶かし込められているようで、どの曲もフォークだとかジャズだとか一言では言い表せない。曲によってヴァイオリンやアコーディオン、時にはストリングスやホーン・セクションが効果的に配され、曲毎にカラーを微妙に変えて彩っていく。

歌詞を吟味したわけじゃないが、この数年のあいだの世界の移ろいを前に、こぼれた想いが綴られているのだろう。ブックレットに写るコバーンは髪も髭も真っ白で、扮装によってはサンタクロースに見えるかもしれないが、その透徹した瞳は変わららず世界を見つめている。
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自分の文化を生きるか殺すか [ポップ/ロック]

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「音楽航海日誌」をパラパラ眺めていると、この人は最近どうしてるかな?と思ってサブスクで検索したりするってことありますよね。
ルイジアナのケイジャン、ジョーダン・ティボドーの、「La prière(祈り)」と題された新作もそうして発見しました。これがまた前作をはるかに凌駕する強力盤。
「俺はハリケーンの中で生まれた!」剥き出しのシャウトに始まる一曲目「Né dans un ouragan」で度肝を抜かれました。

前作も粗削りで無垢なケイジャン・ミュージックを体現した作品でしたが、本作はもう前作でさえ大人しかったと感じるほどの激情迸る音に圧倒されます。前作では伝統を次の世代へ伝えていこうという初々しい情熱が音にも表れていましたが、ここではその想いは変わらずとも、そこから一歩踏み出し、今自分が奏でる音こそが伝統であり、ティボドーいうところのルイジアナ・フレンチ・ミュージックは今ここにある自分達の生活や喜怒哀楽を伝えるリアルな音楽なんだと宣言してるかのようです。

激情的な一曲目からメドレーの様に繋がる「Blues de bon rien」はプロデューサーも務めるギターのジョエル・サヴォイのトワンギーなギターが艶めかしいケイジャン・ブルース。
3曲目でようやく登場する軽快なロッキン・ケイジャン「P´US PERSONNE」。ブルース・ブギー「One-step de Rôdailleur」、荒々しいダンス・ミュージック「Cypress island stomp」、前作以上に多彩な曲が揃っていますが、様々なスタイルを試す中では、その演奏法は違う、伝統的じゃないだのという言葉もあったようです。

でも過去のスタンダードなレパートリーを演奏するのでなく、自分の感じたことを音にすることこそが、伝統を継いでいくことになるのだという確信と覚悟がすべての音から感じられます。ここ数年のうちに書いた40曲ほどもある中から選ばれたという10曲は、自分がどこから来たのか知っているから、この音楽と共に未来へ向かっていけるのだという自信が漲っています。

ジャケに写っているのはティボドーの曾祖母だそうで、裏ジャケには同年代の古い家族写真に「自分の文化を生きるか殺すか」の文字が添えられている。本作を聴けば、その曾祖母の時代から受け継がれた自分達の文化を捨てずに受け継いでいきたいという想いが全ての音から伝わってくる。

アルバムはルイジアナ、サイプレス・アイランドの地中深くから鳴り響いてくるようなフィドルのドローンの中、チャントのようなメロディを歌うティボドーの歌声が娘たちのコーラスに引き継がれて幕を閉じる。ケイジャン音楽の脈動をありありと伝える傑作です。
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