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最後に奏でられた壮健なる音楽 [クラシック]

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先月9月18日にドイツの指揮者クルト・ザンデルリンクが98才でベルリンで逝去した。
99才になる誕生日の前日だったという。

僕がクラシックをちゃんと聴くようになった7〜8年前、最初に好きになった指揮者だった。
どんな曲を指揮しても、作為なく音楽を大きくうねらせていくところにすっかり魅せられた。
特にブルックナーの交響曲第7番が好きだった。というかそれほど多く聴いてるわけではないので。
クラシックを聴くようになって改めて自分の音楽の好みは結局ロックだろうがジャズだろうがワールド・ミュージックだろうが、同じなんだなぁとよーくわかった。

2002年5月19日のベルリン交響楽団との引退公演がCDで残されている。
演奏されたのは

ブラームス;ハイドンの主題による変奏曲
モーツァルト;ピアノ協奏曲第24番(ピアノ:内田光子)
シューマン;交響曲第4番

当時89才、でも音楽はのびのびと健やかで清冽。
写真をみるとザンデルリンクはかなり大柄な人みたいだけど、その体躯を大きく揺らしながら指揮している姿が目に浮かぶよう。半世紀以上音楽に人生を捧げてきて最後の指揮。
どれも胸の高鳴りが抑えられなくなるような名演だと思います。

Kurt Sanderling, 1912 - 2011. R.I.P.
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何も表現しないで表現すること [クラシック]

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マリア・ジョアン・ピレシュ「ショパン後期作品集」。2008年作。
最近知った人。現代を代表するピアニストだと言うが全然知らなかった。
(日本ではピリスと表記する方が多いようです。個人的にはピレシュですでに刷り込まれてしまったので・・・)

1944年生まれと言うからから今年でもう67歳。ポルトガル生まれ。現在はブラジルのバイーア在住。
70年代後半から80年代初めは手首の故障で活動休止していたようだが、80年代中頃に復活し、90年代には多くの作品を残しているという。

何か一枚聴いてみようと思って調べてみると彼女はモーツァルト弾きとして有名らしい。
あと、シューベルトとか。でも、このジャケットの彼女のポートレイトに惹かれてこれに決めました。
いい写真です。
このポートレイトの印象と違わない音がスピーカーから流れてくる。
激しい雨や風をくぐりぬけた後、すっくとそこに立っているかのような力強さとしなやかさ、そして内に秘めた熱情。

「私の究極の望みは、何も表現しないで表現すること」とインタビューで語っている。
クラシックの演奏家は作曲家が既に故人であるため、入念に勉強して作曲家の人生や曲に込めた想いをやたらとシリアスに受け止めて演奏に過剰な思い入れをこめがちなように思う。
おいおい、そりゃちょっとシリアスすぎるだろ!と突っ込みを入れたくなる人もいる。

ピレシュの演奏はそれを感じさせない。自分自身で曲を解釈しないというか、音楽が流れるままにする。音楽自体に語らせ、その中に自分自身を同化させているよう。演奏家のエゴが全く見えない。だから、聴き手の受け取り方によって幾重にも表情を変える。安易にぬくもりや女性性にも逃げない端整なピアノ。

現在の彼女は年齢的にもピアニストとして円熟の境地にあるに違いない。
最初からこんな演奏をしていたわけがない。彼女の若き日の演奏も聴いてみたいが。

僕はショパンをほとんどまともに聴いたことがない。なよなよした甘ったるい音楽だなっていう印象ばっかりあって。それは一般的な「ショパンの曲ってロマンチック!」という評判に多分に影響されているのは確かなんだけど。
このCDを聴いてかなり印象が変わりました。ピレシュの演奏によるせいか、後期作品であるせいか、多分両方なんだろう。

彼女は若き日にヴィルヘルム・ケンプの薫陶を受けたと言う。
これだけで思わず膝を乗り出す人いますよね?なるほどケンプに通じるものはある。
でもそれだけじゃない透徹した独自の世界。

http://www.youtube.com/watch?v=DBM4QFCH1PA&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ihkokrs3Eo0&feature=related

彼女は5月に来日する。これは聴きに行きたいなぁ。

眺めのいい部屋の窓辺から [クラシック]

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愛読ブログ「遅ればせながら衝動的」に洗脳され?クリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団「ラヴェル;亡き王女のためのパヴァーヌ、クープランの墓、道化師の朝の歌、他」を購入。

好きな「マ・メール・ロワ」にしようかとか、ビゼーの「アルルの女」にしようかとも思ったが結局聴いたことのないこれにした。

ラヴェルという作曲家は「オーケストレーションの魔術師」なんていわれるが、ぼくのようにポピュラー音楽でもアレンジなど「ここはこうなって、あそこはあーなって、ふむふむ、なるほど、なるほど」なんて風に聴くリスナーにはとても聴いていて楽しい作曲家だ。

クラシックには詳しくないのでアンドレ・クリュイタンス(1905-1967)という指揮者もまったく知らなかった。
曲じたい初めて聴くので他の指揮者と較べることはできないけれど、一聴したところなんだか眺めのいい部屋の窓辺から景色を眺めているみたい。

それぞれの楽器やハーモニーの響きに細心の注意が払われているのがよくわかる。それでいながら全体の流れはせせこましくなったりせず、聴き手はゆったりと音楽に身を任すことができる。これはやはり録音がどうとかよりも(でも録音もすごくよい)クリュイタンスという指揮者の力量によるところが大なのでしょう。耳がいいんだろうな。って偉大な指揮者に失礼ですね。

この曲が耳になじんだら、次は「ダフニスとクロエ」あたりを聴いてみようか。
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