言葉の意味を飛び越えて [R&B/JAZZ/etc]
いやぁすんごいことになってるなこれは。
昨年からポツポツとリリースされる曲から、ある程度予想はしてましたが、KID FRESINOの新作「20,Stop it.」は前作を遥かに凌駕する傑作です。いきなり言い切っちゃいましたよ。でもほんとすごい作品です。
前作にも参加していた三浦淳悟や石若駿といったそれぞれがジャンル横断して活躍する精鋭ミュージシャンと盟友jjjやロンドンからobject blueなどといったトラック・メイカーに加え、カネコアヤノや長谷川白紙といった同世代の気鋭の音楽家も参加して、ヒップホップ~現代ジャズ~ビート・ミュージック~ポップスが渾然一体となった音楽が溢れてきます。
KID FRESINOのリリックは英語比率が高いですけど、カッコつけで横文字を連発してるんじゃなくて、言葉の響きやグルーヴを重視しているからなんでしょう。言葉の意味を飛び越えて、五感に訴えかけるラップといえばいいか。そもそもアルバム冒頭からして聴こえてくるのは中国語だしね。
僕が所謂日本語ラップを聴いて辟易してしまうのは、「ヤンキー版青年の主張」のようはリリックを聴かされるからなんですよ。多分日本語ラップが好きな人はJ-POPファン同様、その内容に反応するんでしょうけど、僕のようなグルーヴや音楽そのものにしか反応しない聴き手にとっては、言葉がグルーヴしてくれないと四畳半フォークと同じなんですよね。
前作はラップ・アルバムにつきものの客演陣にちょっとなぁと思うものもあったんだけど、今回はスリリングなバックトラックに耳が行きがちなのもあって、あまり気にならない。
しかし、これだけ「音楽的」なラップ・アルバムだと日本語ラップ・ファンにはあまり受けないような気がするけど、どうなんでしょうね。そういえばラストの「Rondo」なんて、普通に歌っちゃってるしね。
ボーナス・トラックとして収録された「No Sun」のリミックスがまたかっこいいんだ。ミニマルな、いやワールド・ミュージック・ファンとしてはマンディング・ギターともルンバ・コンゴレーズのようなとも形容したいギター・プレイも耳を引きますが、中盤、ドラムと丁々発止で渡り合うパートはもうインプロヴィゼーションそのもの。圧倒されます。
昨年頭はモーゼス・ボイドのカッコよさにノックアウトでしたが、今年も正月明けにいきなりこれですよ。今年一番かっこいいアルバムはこれかも。これを超えるのはなかなか難しいですよ。
正月明けながら今年のベスト選確定の傑作です。
そういえば本作のリリースを知ったのは正月休みだったんですが、リリースライブが7日あると知って、見たいなぁと思ったらすでにソールドアウトで。でも緊急事態宣言が出るとかってことで、中止になっちゃいました。でもオンラインライブが開催されるそうで。チケットなかったこちらとしてはうれしい。明日はiri以来のオンラインライブです。楽しみ~。