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身体性を伴ったエロティシズム [ポップ/ロック]

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一か月くらい前にラジオで米倉利紀の「elephant LOVE」という曲を聴いたんですけど、最初聴いた時は、なんか気持ち悪い。気持ち悪いってのもひどいですが、なんかすごい拒否反応があったんですよ。その時はまぁ自分の趣味じゃないなってことだったんですが。

でも一か月くらい経ってから、なぜかまた聴きたくなっちゃって、その曲が収録されてる1月にリリースされたアルバム「pink ELEPHANT」を聴いたら、あれ?けっこう良い?いやかなり良い?どうなのこれ?
なんか自分でも判断が付かない感じだったんですけど、2回も続けて聴いちゃって、三年殺しなんて言葉がありますけど、一か月殺しでやられてしまいました。

最初に聴いた「elephant LOVE」をなんでちょっと気持ち悪いって感じたのか考えてみると、この曲はよく聴くとラテンなんですけど、日本の古いラテン歌謡、あまり詳しくないですけど、そういう昭和歌謡的な香りをそこはかとなくまとったメロディと、現代的なプログラミングやグルーヴ、その古いんだか新しいんだか、洒落てるのかダサイのかわかんなくなるような感覚にちょっと引いちゃったんでしょう。
他の曲もそうなんですけど、R&B的なグルーヴを持った音楽をJ-POP的な歌謡世界で表現しているそのちょっとバタ臭い感じ?に拒否反応があったんだと思います。
と自分では解釈してるんですがね。

米倉利紀って歌手の事は以前から知ってはいました。90年代前半にデビューして、本作が24枚目らしい。自分にはあまり接点のないポップス・シンガーだと思ってました。メジャーでもないけど、マイナーでもない微妙な位置にいる人だと思いますけど、ずっとメジャーからアルバムをリリースしてるってことは、多分固定ファンがちゃんといるんでしょう。根強いファンが。

それにしてもこのアルバム。聴けば聴くほど良いなと感心してます。
モダンなグルーヴで心地よく身体を揺らす「merry-go-round」に始まり、エレクトロニックなノリを加味した「see EYE to EYE」、そこから鮮やかにポップな世界に導く「LOVE GEAR」。この3曲であっという間に自身の歌世界に引きこんでしまう。だてに24枚もアルバム出してない。キャリアは伊達じゃないですよ。

以降もアップ、スロウ、ミディアムと粒ぞろいの曲が続くんですが、どの曲も膨らみを持った歌として特別なものにする、卓越した歌唱力に唸ってしまう。鮮明なディクションに艶やかなファルセットも旨い。
日本の男性シンガーでこんなに歌うまいなぁと思ったのはほんと久しぶりです。たいていは1曲まともに聴いてることもできないことがほとんどなんで。

R&Bを立脚点としてるという点で、岡村靖幸とも相通じる部分があるんですけど、まぁ岡村ちゃんほどファンキーじゃないけど。こういう歌に欠かせないエロティシズムが歌いっぱいに迸っているのが良いよな。妄想が爆発した岡村ちゃんのエロと違って、この人の場合身体性を伴ったエロと言いましょうか。そういう歌はJ-POPではなかなか聴けないもんね。
そうそう、岡村ちゃんの新作がいつまでたっても配信でリリースされないので、CD買おっかなぁと思ってたんですけど、もうこれ聴いちゃったら岡村ちゃん吹っ飛んじゃったよ。

聴きながらこれを書いてるんですが、いやほんと良いなぁ。尖がったところはないけど、きっちり現代的なアップロードは施している。この完成度はキース・スウェットなんかに通じると思いますよ。傑作です。

それにしてもこのMVは意味わからん。

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