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ここは退屈迎えに来て [本]

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地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、「R‐18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。

山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」。
地方都市に旅行に行ったりすると、この街で暮らして仕事するってどんな感じかなぁとかよく想像する。
地方ガールの退屈やうんざりやイライラがリアルに閉じ込められた秀作。面白かった。次作にも期待。
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王城の護衛者/ラジオのこちら側で [本]

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薩長両藩が暗躍し、攘夷派の浪士たちが横行する、無政府状態に近い幕末の京。新たに京都守護職を命じられた会津の青年藩主・松平容保は、藩兵千人を率い、王城の護衛者として治安回復に乗り出すが、複雑怪奇な政治の術数に翻弄され…。

司馬遼太郎 「王城の護衛者」。
大河ドラマ「八重の桜」を毎週楽しみに見ている。それで興味を持った会津藩主松平容保についての短編。ちょうど今ドラマでやってるところだから新しい発見はなかったけど。読んでてなんともやるせない気分になります。ドラマもね。他に収録された短編も幕末の個性豊かな人物を取り上げていて勉強になりました。

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1974年、テレビやラジオ、ロックやジャズへの未知なる期待が渦巻いていたアジアの国・日本に降り立ったロンドン青年。文化の壁にぶつかりながら、素晴らしい音楽を電波にのせるべく今も奮闘中の著者が、音楽シーンとメディアの激変を振り返り、愛してやまないラジオと音楽の可能性を、今あらためて発信する。

ピーター・バラカン 「ラジオのこちら側で」。
バラカンさんのラジオには本当に今までお世話になってきた。今も毎朝の「バラカン・モーニング」に土曜の「ウィークエンド・サンシャイン」と愛聴してます。

思い出深いのは88年に放送された「What is Soul?」。黒人音楽をかじり始めたばかりだたったので夢中で聴いてた。今でもカセットが残ってる。あと、89年からベイFMで始まった「ベイ・シティ・ブルーズ」。金曜の夜中とゆうか土曜の明け方3時から5時にやってたあの番組、眠くて起きるのが大変だったけど、きっといい曲かけてくれる!と思って聴いてました。今みたいにネットなんかなかったし実際に音を聴けるのはラジオだけだったから、ほんと楽しみにしてたっけ。20年以上前かぁ。

この本はバラカンさんが日本に来て日本社会で四苦八苦しながらも、ラジオへの情熱を失わずにやってきた道のりが暖かく刻まれてます。自分が聴いてきた番組が多いので思い出すこともたくさんありましたね。
ラジオってまだまだ可能性ありますよ。
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神去なあなあ夜話 [本]

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三重県の山奥で、林業に取り組む平野勇気、二十歳。神去村の起源、住人の暮らし、もちろん恋にも、ぐいぐい迫ります。お仕事小説の旗手が贈る、林業エンタテインメント小説の傑作。

三浦しをん「神去なあなあ夜話」。
以前読んだ「神去なあなあ日常」の続編。
相変わらずじわっとほっこり楽しい作品。
この人はストーリーテリングがうまいですね。

梢がざわめく。音もなく頭上にちらばる星。どこかで鳥がはばたき、小動物が走っている。ノコの三角形の耳が、蝶々の羽みたいに震える。
なぜだろう。俺はもう、夜の山にこわさを感じなくなっていた。布団のなかで目をつぶったときみたいに、密度の高いあたたかい闇が、俺たちを取り巻いていた。
見守るように。なにかに囁きかけるように。

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くまちゃん [本]

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風変わりなくまの絵柄の服に身を包む、芸術家気取りの英之。人生最大級の偶然に賭け、憧れのバンドマンに接近したゆりえ。舞台女優の夢を捨て、有望画家との結婚を狙う希麻子。ぱっとしない毎日が一変しそうな期待に、彼らはさっそく、身近な恋を整理しはじめるが…。ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。

角田光代「くまちゃん」。
誰もがかつての自分の姿をそこかしこに見つけてしまうだろう物語。
かるーくさくっと読めてしまうけど胸にのこる作品でした。
ふられたことのある人にはおすすめします。

くまちゃん。苑子は心のなかで、短い日々をともに過ごした男の子に向かって呼びかける。くまちゃん、今なら私、あなたのことが少しわかるよ。ふつうで平和な毎日が、けっして私をだめになんかしないと、そういう日々の先に私にしか手に入れられないものがあるらしいと知った今ならば、わかるよ、あなたのことが。くまちゃん。
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双頭の船 [本]

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失恋目前のトモヒロが乗り込んだ瀬戸内の小さなフェリーは、傷ついたすべての人びとを乗せて拡大する不思議な「方舟」だった。船は中古自転車を積みこみながら北へと向かい、被災地の港に停泊する。200人のボランティア、100匹の犬、猫や小鳥、「亡命者」―。やがて船上に仮設住宅が建ち、新しい街と新しい家族が誕生し…。希望を手離すまいという強い意思にみちた痛快な航海記。

池澤 夏樹「双頭の船」。
寓話的な物語。静かだけれど訴求力のある作品でした。
今読まれるべき物語だと思います。

すごい力がここに襲いかかって、大きな波が来て、ぜんぶ壊してしまった。平らになった地面はまるで神話の舞台のように見えたけれど、そこではまだどんな神話も生まれていない。この空っぽの場所の至るところに草の種みたいな神話の種が埋まっているのが見える気がした。いつかそれが芽を出して伸びる。その種の一つ一つを亡くなった人たちの魂が包んで養って育てる。葡萄の実とその中の種のように。

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朝倉 宏景「白球アフロ」 [本]

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都立等々力高校野球部。甲子園には程遠い弱小校に、黒人転校生がやってきた。アフロ×高校野球×恋愛が紡ぎ出す軽やかにして熱量あふれる青春ストーリー!。

朝倉 宏景の初作「白球アフロ」。
タイトルが面白いので読んでみた。
後半の試合の場面は青春!って感じで清清しい。
久々キャッチボールがしたくなった。

これほど無生産で無目的で無意味なことはないだろうと思う。ただボールを投げるためだけにボールを投げていた。べつにキャッチボールがおもしろいわけでもないし、こうやって投げあったからといって相手の心中が理解できるなんて都合の良いことでもない。できるかぎり正確に、力強く、相手の胸元に向かって投げこんでいくだけだ。
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村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 [本]

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良いニュースと悪いニュースがある。 多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは……。

4月の購入本はもちろんこれ。
村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。
前作「1Q84」よりは「国境の南、太陽の西」とか「ノルウェイの森」に連なる作品でしょうか。

前作が長大な物語だったせいか、今回は気軽に手癖で書かれたような印象も。その分、時々まだるっこしく感じられるこの人の作品ですが、本作は物語の運びがシンプルでとても読みやすかった。
発売日に買って翌日には読み終えちゃいました。十分楽しんだということでしょう。
賛否両論いろいろあると思いますが、良作だと思います。
しかし村上春樹の小説ってどっからどう読んでも村上春樹って感じですよね。
他の小説とは明らかに違う。これってやっぱすごいことですね。

人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。
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マリアージュ・マリアージュ [本]

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キスをして抱きしめられて、初めて普通の状態になれた―あの頃。自分一人だけで、自分一人として、存在できるようになった―今。結婚と愛の変転をめぐる6つの物語。

金原 ひとみ「マリアージュ・マリアージュ」。
短編を一つだけ読んだことしかなかったので、改めてこの一冊を。

かなり自意識過剰な主人公達が恋人や夫との関係の中であれこれ思い煩う物語。と言ってすましたくなりつつも、確かに感じられる切実さに引き込まれ、登場人物が自分の周りには見当たらない人たちばかりなので自分にはあまり関係ないかなぁとも思いつつ最後まで読みきった。

印象的なカバー写真はダミアン・ハーストによるもの。
美しさとグロテスクが同居するような内容によくあってる。

私は全身を焦がして愛している。強烈に愛している。でもその愛の行方が分からない。自分が、身をたぎる愛が、どこへ向かっているのか分からない。目の前が真っ暗になっていくのを感じた。深い絶望が大きな口を開けて、このホテルのラウンジの窓の向こうの方から、この世を飲み込むような勢いで、私に向かって飛んでくる。
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二流小説家 [本]

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残忍な手口で四人の女性を殺害したとして死刑判決を受けたダリアン・クレイから、しがない小説家のハリーに手紙が届く。死刑執行を目前にしたダリアンが事件の全貌を語る本の執筆を依頼してきたのだ。世間を震撼させた殺人鬼の告白本! ベストセラー間違いなし! だが刑務所に面会に赴いたハリーは思いもかけぬ条件を突きつけられる……

デイヴィッド・ゴードン 「二流小説家」。
昨年話題のミステリー。期待して読みましたが、それほどでもなかった。
最後まで楽しく読めたし退屈はしなかったけど、ミステリーとして取り立てて優れた作品でもないのでは?
主要なキャラ設定もテンプレっぽいし、最後のどんでん返しもそれほど驚くほどでもない。小粒。
日本で映画化されるらしいけど、原作から大幅に毒抜き・アク抜きされるのは間違いないので駄作の予感大。

どう折りたためばいいのかもわからないような古ぼけた地図ひとつを頼りに、深い森へ迷いこんだかのような気分に陥ることもしばしばある。その森のなかでは、周囲の木々がどれも同じに見える。正体不明の動物たちがつねに茂みをざわつかせている。鞄におさめたサンドイッチには、注文したものとはちがう具材が挟まっている。とはいえ、そういう人間がこの世にぼくひとりでないこともたしかだ。人生の答えが見つからないからこそ、これほど多くの人間がパズルやゲームや推理小説にのめりこむのだろう。
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忍法八犬伝 [本]

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八犬士の活躍150年後の世界。里見家に代々伝わる八顆の珠がすり替えられた! 珠を追う八犬士の子孫たちに立ちはだかるは服部半蔵指揮下の伊賀女忍者8人。果たして八犬士たちは珠を取り戻し、村雨姫を守れるのか!?

山田風太郎「忍法八犬伝」。
忍法帖ものはだいたい読んだと思ってたけどこれは読んでなかった。
相変わらず先が気になってスイスイ読んでしまう面白さ。
最高のエンターテイメント。それに改めて文章が美しい。
明治ものも久しぶりに読み返してみたくなったな。

ひとしきり旅人が絶えて、ひっそりとした街道にただ白いひかりだけが満ち、ものうい春風に吹かれて飛んできた海燕が、破れ傘の上に、ついととまったが、傘はいつまでもうごかなかった。
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