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回転して立ち上がるリズム [R&B/JAZZ/etc]

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うちにはピアノ・トリオのアルバムってあんまりない。
やっぱりカルテット~クインテット編成が好きだし、サックスやトランペットがいた方がアンサンブルがより楽しめるし。

だから、ヴィジェイ・アイヤーもセクステット編成だった2017年の「Far From Over」は待ちに待ったという感じで、実際素晴しいアルバムでした。そもそも彼のピアノ・トリオやソロ作をほとんど聴いたことないんですけど。ってことは他の参加作で僕はこの人に注目してたのかな。そこらへん定かでないですが。

今回はピアノ・トリオってことで、あんまり興味をひかれなかったんだけど、ドラムにタイショーン・ソーリー、ベースがリンダ・メイ・ハン・オーと聞いて俄然興味をひかれました。タイショーンは「Far From Over」でも叩いていたし、リンダは昨年のパット・メセニーのアルバムで弾いていたのが印象的でした。本作はそんなこちらの興味と期待に見事に応える素晴らしい作品に仕上がっています。

ヴィジェイはインド系だからなのかこれまでもそのリズム・センスは抜きんでていましたが、ゆるやかな竜巻のように回転し、屹立するリズムに圧倒されます。いやリズムだけじゃなく音楽が目の前ににょきにょきと立ち上がってくるように感じられます。

タイショーンのドラムがピアノに呼応して、猛烈なグルーヴを叩きだし、リンダのベースも弾力豊かにリズムを跳ね返す。異なる時間軸が同じ空間の中で時に重なり時に反発するようにスウィングするようでジャズらしいスリルを全編で味わえる。
タイショーンはソロとしては現代音楽ともいえるような作品をリリースしていて、リズム以外も含む音楽的な鋭敏さを持ってるからでしょう、リンダのリーダー作は聴いたことないけど、彼女も作曲家とかそういう感覚が強い音楽家なのかもしれない。そんな二人を得たからこそヴィジェイの音楽も新たなフェーズを迎え得たのかもしれない。

ヴィジェイのピアノの激しても漂う詩情は、タイトルにも表れるコロナ禍を含めた現代社会への憂いゆえだろうか。
最近は短い作品が多いので、ひさしぶりに70分強もあるアルバムですが、最後まで緊張感を保ったまま聴き終えるられる、現代ピアノ・トリオの作品としてもひとつの頂点を示したと思える傑作。
ただあいかわらずECMは音のレベルが低すぎる。これ聴くのにいちいちボリュームを上げなきゃらないんだもん。
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