SSブログ

ブラジル音楽への清々しい敬意 [R&B/JAZZ/etc]

LEGACYALCHEMY.jpg

アトランタ出身のシンガー、アレシャンドラ・ジャクソンの「LEGACY & ALCHEMY」はブラジル音楽へアプローチした2枚組の大作。詳しいことは知りません。ジャケからすると30歳前後?かな。だとすればそれなりのキャリアがあると思いますけど、他にアルバムは見当たらない。多分クラブとかを中心に活動するシンガーだと思う。CDをiTunesに取り込むとジャンルはジャズになるので、まぁ基本はそういうとこにあるんでしょう。

本作は一曲目のロー・ボルジェスの曲のイントロからしてアコギのカッティングにエレピだし、音楽的には所謂ブラジリアン・ジャズ・フュージョン。こういうのって多分いっぱいあると思いますけど、僕はほとんど聴いたことない。ウェイン・ショーターがミルトン・ナシメントとやったのとかも聴いたことない。

このアルバムは参加メンバーがすごい豪勢で、ゲストもアル・ジャロウ、イヴァン・リンス、カルリーニョス・ブラウン、故イヴォニ・ララなど、バックの演奏もブラジルとアメリカの腕利きのそろい踏み。ただ最近の若手じゃなくて、それぞれのレジェンド・ミュージシャンって感じかな。
そのせいもあり若干コンサバティブではあるけど、ジョビンはじめブラジル音楽の超有名曲が素直に正攻法で歌い演奏されていて気持ち良く聴き通せる。

時にはThe Bossa Nova Noites Orquestraと冠された管弦オーケストラも入り、録音も素晴らしくよろしく丁寧に紡がれた音がひたすら心地よい。
ジョビンの曲は息子&孫ジョビンを迎え、イヴォニ・ララを迎えたサンバはストレートにエスコーラ系でにっこり。「コルコヴァード」はオーケストラ入りの豪勢な演奏をバックにわざわざ「クワイエット・ナイツ」からのマイルスのソロまで引用している。

MPB系はあまり馴染みがないけど、冒頭のロー・ボルジェスからシコ・ブアルキ、ジルベルト・ジル、イヴァン・リンスなどまぁ有名曲ばっかりなんでしょう。
ラムゼイ・ルイスの「Brasilica」などブラジル音楽以外の選曲もあり、「Our Time Now」は作者のロッド・テンパートン本人を迎えている。テンパートンは2016年に亡くなっているので、本作はかなり時間をかけて制作されたようです。丁寧にじっくりと製作されたことが音の端々から伝わってくる。これだけ完成度が高ければ、新味はなくとも文句はない。とにかく聴いててひたすら心地よいのです。

アレシャンドラの歌について全く触れてませんでした。ふくよかな温もりを感じさせる中低音域がくっきりとしたサウンドの中で映える。ピッチのしっかりした声量を感じさせる落ち着いた歌声は、好き嫌いなく誰の耳にも馴染むことでしょう。

きっともっと暖かくなった春から初夏にかけての風薫る季節の方がよく似合う音楽かもしれない。もちろんそれまで寝かせておくつもりはないけど、ブラジル音楽への清々しい敬意に溢れた秀作です。

nice!(1)  コメント(0)