SSブログ

「Hello World」が名盤である件 [ポップ/ロック]

hello.JPG

昨年末に購入したスキャンダル「Hello World」のヘビロテが止まらない止まらない。
一度記事にしたけど、本作がどれだけ素晴らしいか、ほんとうにわかってきたのはつい最近なので、改めてもう一回。今回は全曲レビューしましょう。

前作の多くの曲にあった鍵盤系の音はほぼ一掃され、ガッシガッシとギターがラウドになっているのが真のロックンロール・バンドになったスキャンダルを現している。
特筆すべきは前作ですでに安定感を増していた四人の演奏力。ここではそこにプレイヤーとしてのセンスもプラスされている。ギター・ベース・ドラムそれぞれに注目して聴いたりして、より一層その思いを強くした。そして何よりソングライティングの向上が、この作品を充実したものにしている。

のっけからのロックンロール8連発!がすごい。
「Image」「Your Song」「love in action」の爽快なアタマ3曲。
これは全ての曲に言えるが、アレンジが機知に富んでいて曲の魅力を十二分に引き出している。鍵盤系でポップにするんじゃなく、ギター中心のアレンジながらメリハリがきいていて単調にならず、外部アレンジャーを起用した曲でも連携がうまくいってる。
「Image」はバンドのフロントマン、ハルナの歌が映えるストレートなロックンロール。スピード感がありながらもしっかりと重心低くグルーヴするリズム隊に、ドライブ感バッチリのギターがバンドの成長をしっかりとアピール。オープニング・ナンバーとして完璧。
「Your Song」はメンバー全員で作ったハルナとトモミ(&マミもちょこっと)のツイン・ヴォーカル曲。緩急を上手く効かせたキャッチーな曲作りに感心。
リナのセルフ・ライナーによれば、「love in action」は『8ビートでも4つ打ちでも無いリズムの曲がやりたい!』ということで出来た曲のようで、そういったプレイヤーとしての欲求/快感に促された部分も本作に大きな活力を与えている。この曲はフィルイン満載でドラマーとしてもチャレンジングな曲だろう。

「Departure」は叙情的なメロディを持った曲。テンポを落とすことなく軽くシフト・チェンジするだけでうまく変化をつけている。ギター・サウンドを基調としながら小編成のストリングスを上手く配したアレンジが秀悦。
続くハルナ作の「Graduation」は等身大の彼女が見えてくるような歌が耳に残る。バンドのメイン・ヴォーカルである彼女の声は、情緒に流れない基本辛口な響きを持っているのが魅力。
6曲目「夜明けの流星群」は作詞にトモミが参加しているが、外部作曲家によるもの。イントロのギターの音が最高。ポケモン映画主題歌にふさわしい、雨のように降り注ぐ希望が眩しい曲。
そう、このアルバムはまずギターの鳴りがすばらしい。とにかく爽快。
本作でのマミのギター・プレイはジャカジャーンと豪快に響かせるだけじゃなく、シャープなプレイはそのままに、曲に彩りや繊細な表情を与えていくプレイが印象的。最近こんな素晴らしいロック・ギターを聴いたのはルシンダ・ウィリアムスの作品でのStuart Mathisくらいかな。

「お願いナビゲーション」は3分間の爆裂ロックンロール。バンドの一体感がハンパない。
ロックがどんなものか知らない人に、今ならこの曲を差し出すのになんの躊躇もない。
「Runners high」はハルナとトモミのツイン・ヴォーカルによるスキャンダルの定番的なロックンロール。このツイン・ヴォーカルは既にスキャンダルのひとつの看板とも言えるのかな。ウネウネとうねりまくるベースがぶっといグルーヴを与えている。カッコイー。

続くは「本を読む」。ここでようやくミディアム・テンポの曲が登場。マミの歌にはキース・リチャーズから連綿と続く?ギタリストの歌という風情が、ちゃんと漂っているのに思わず感じ入る。詞作の面白さは前にも触れたので、ここでは「この曲のここを聴け!」ポイントを。ブリッジ部の終わりの「私なりのハッピーエンドうぉーをっ!オーオッ!」。この「オーオッ!」の部分での感情のはじけ方に胸が震えるんです。ギタリストが歌う名曲の仲間入り。

トモミの声はかなりのアニメ声で最初聴いたときはなかなかキッツイなぁ。アルバム一枚は無理だな、でも数曲ならまぁいいかって感じだったんだけど。慣れとは怖いもので、最近はこの声が聴こえてくると、もうたまんない気分になってしまうんですよね。特に「缶ビール」は世紀の名曲といっていいでしょう。
イントロに続いてリズムがブレイクしてギターのガシャガシャをバックに歌が始まり、一気にドラムが入ってくるところのかっこよさ!2コーラス目はベースだけブレイクしてドラムとギターだけになったり、アレンジが美味い!あと意識したわけじゃないだろうけど、言葉とリズム、メロディの譜割りが絶妙なんだな。2コーラス目のヴァースの部分は特に。
それと彼女のベース・プレイも素晴らしい。彼女はレッチリのフリーが好きなんだって。ときにグルーヴィなベース・ラインはそういうことか。彼女は指引きなんですよね。歌いながらこのベース・ライン弾くの難しいだろうなと思っても、映像を見ると当たり前だけどしっかりと歌いながら弾いていてカッコイーなぁ。今一番好きなベーシストです。

「おやすみ」はリナ本人の弁によれば彼女なりのシューゲイザーなんだそうだ。
なるほど、言われてみればこの轟音ギターはシューゲイザー。でもあの自己陶酔的シューゲイザーをこんなキュートな曲に仕立ててしまうなんて、こういうのを才能と呼ぶんだろう。素晴らしすぎる。

冷たい北風さえ爽やかに感じられる「Winter story」は口の中が甘酸っぱくなるような冬ソング。メロトロンの音が冬の温もりを伝える。
最後は小室哲哉とのコラボ曲「Place of life」。サビから始まる曲構成といい、さすがヒット・メイカーつかみがうまい。ここからまた4人は多くを学ぶんだろう。ラストにふさわしい華やかな曲。
そういえば本作は全曲フェイドアウトはなく完奏曲。そんなところも好感度大。作為なくバンドのドライブ感を刻みつけた録音も◎。

本屋で今月のミュージック・マガジンを手に取ると、本作はなんと5点。
「『メンバーが丁々発止しながら楽曲を転がしていく感じ』がほしい」とのことだが、その「メンバーが丁々発止しながら楽曲を転がしていく感じ」が、本作には満ち満ちていると僕は思っているのだけど。
ミキシングがきれいすぎる?荒々しさを装っただけの作為的なミキシングに比べて、バンドのグルーヴを素直にすくい上げたこのミキシングは素晴らしいと思うのだけど。

人によって評価が違うのは当たり前、自分が高く評価するものを評論家が貶すなど今に始まったことではないので別にかまわないが、ひさしぶりに同じ作品を聴いているとは思えないような正反対の評価を見たのでちょっとびっくり。この作品からバンドらしい一体感/グルーヴを感じられない人がいることに、単純に驚いてしまいました。かくも人の感じ方は様々なんですね。

おそらく音楽ジャーナリズム/評論家などからは、アイドルもどきのガールズ・バンドと扱われ全く相手にされないのだろう。相手にされないからこそ本作は素晴らしいのかもしれない。僕が聴いてきたロックンロールの中でも最高ランクに位置する傑作。
いや既に名盤。
nice!(0)  コメント(2) 

nice! 0

コメント 2

ころん

全曲レビュー、思い入れたっぷりでイイですね~。ワタクシもマネしてヤッテみようかな~。とりあえずワタクシもこの盤のヘビロテが全く止まらず、1日に2回は聞く状態が続いております。今年はコレとE-GIRLSの新作があればOKかな~という気がしています。

「本を読む」の「オーオッ!」、わかりますよ~。ワタクシは「同じ数だけ涙をなが~して~みた~い」の「みた~い」で昇天しそうになります。普段はコワイ顔したマミたんの、超絶カワイイ瞬間だと思っております♪2/28はスキャンダルのライヴに行って来ますが、「本を読む」を歌ってくれたら嬉しいな~。

何にしても、ワタクシも「ハロー・ワールド」は名盤だと思っておりますよ!
by ころん (2015-02-24 12:36) 

Astral

ころんさん

ほんとめったに出会えないような名盤ですよね。
偏見持たずにもっとたくさんの人に聴いて欲しいなぁと思って全曲レビューしてみました。他にもいっぱい書きたいことあるんですけど、またそのうちスキャンダルに関しては記事にしたいと思います。
ライブ・レポート楽しみにしています!
by Astral (2015-02-24 22:38) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。