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オクシタニアの地霊を呼び覚ます声もしくは神秘主義的降霊式 [ヨーロッパ]

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風に何かが揺れている。いやその揺れている何かがこだましているのだろうか。ヴィエル・ア・ルーの奇妙な音色が鳴り響くなか、サム・カルピエニアのまるでオクシタニアの地霊を呼び覚ますかのような声が聴こえてくる。
フランスのバンド、デュパンの10年ぶりの新作「SORGA」はどことも知れぬ辻道に、もしくは神秘主義的降霊式に聴き手を誘うように始まる。

ジャズ・インプロ畑出身のドラマーのフランソワ・ロッシとコントラバス奏者エマニュエル・レモンが叩き出す冷徹なリズムに、サムのマンドールにピエロー・ベルトリノの弾くヴィエル・ア・ルーとギュルヴァン・ル・ガックのフルートが彩りを添えるというより、キャンバスをひたすら黒く塗りつぶしていくかのように演奏は一点に向けて全てを収束していく。振り払うものが何もなくなるまで。
サム・カルピエニアの声はゆったりと歌いながらも常に叫びをというか雄叫びのように聴こえる。市井の人々の哀歓を束ねたような声。

歌詞はマクサンス・ベルナイム・ド・ヴィリエという詩人の詩で、サムが古本屋でみつけたという詩集からインスピレーションを得て本作は制作されたという。ブックレットにはオック語・フランス語・英語でその詩が綴られいているけれど、それは特定のイメージを喚起するのを拒否するように、奇妙な言葉遊びのようにもシュールレアリスム絵画のようにも読める。
「沸泉、水源」という意味だというアルバム・タイトル。
サム・カルピエニアはその源泉を口にしたのだろうか。全てをその源泉に持ち帰ろうとしているのだろうか。
ほかの誰にも真似できない方法で、それをなそうとしている。
傑作。



ジャケもブックレットも既に名盤の風格を備えている。
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本作に関してもっと優良な文章を読みたければ「カストール爺の生活と意見」をどうぞ。素晴らしいライナーノーツです。
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