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滋味深い成果 [ポップ/ロック]

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昨年、聴いてなかったロック系のアルバムを聴いてく中で、ブルース・コバーンも聴いて、それから今年に入ってからもコバーンのアルバムをよく聴いてました。といっても数枚しか持ってないですけど。
僕は決してコバーンの良い聴き手ではないけど、いつでも信頼できる音楽家という印象なんですよね。最近は特にそう思います。

コバーンの作品を全部聴いてるわけじゃないが、というかその半分も聴いてないんだけど、アクースティックだったり、ジャズ的だったり、ロック的だったり、と音楽的な変遷はあるにせよ、その時々でそれらの音楽的成果を残した人だと思う。この時代のアルバムは今聴くと厳しいなというのがあまりない。リチャード・トンプソンと似てる。ギターの名手でもあるし。たぶんあまりセールスとかを気にしなくてよいからかもしれない。固定ファンがちゃんといてヒット曲を要求されるわけでもないし。

コバーンの新作を聴くのは2011年作「Small Source of Comfort」以来。あのアルバムは僕の中で震災と強く結びついてしまった思い出深いといっていいのかわからないけど、そんな作品でした。その後2枚くらいあったと思うけど、それらはスルーしての新作「O Sun O Moon」。

自身の弾くアクースティック・ギターを中心としたアンサンブルの穏やかなアルバムとなっていて、プロデューサーを務めるのは盟友コリン・リンデン。録音はナッシュビルで行われていて、そのせいかベースにはライル・ラヴェットのラージ・バンドに在籍もするヴィクター・クラウス、ドラムは90年代から付き合いのあるゲイリー・クレイグ。コーラスのサラ・ジャローズ、アリソン・ラッセル、ショーン・コルヴィンなどがささやかな華やかさを添えている。

アクースティックながらドライブ感のある「On a Roll」で始まる本作は、長いキャリアの中で培われた音楽的成果が滋味深く各曲の中に溶かし込められているようで、どの曲もフォークだとかジャズだとか一言では言い表せない。曲によってヴァイオリンやアコーディオン、時にはストリングスやホーン・セクションが効果的に配され、曲毎にカラーを微妙に変えて彩っていく。

歌詞を吟味したわけじゃないが、この数年のあいだの世界の移ろいを前に、こぼれた想いが綴られているのだろう。ブックレットに写るコバーンは髪も髭も真っ白で、扮装によってはサンタクロースに見えるかもしれないが、その透徹した瞳は変わららず世界を見つめている。
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