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クリシェを取り払った佇まい [R&B/JAZZ/etc]

Speak To Me.jpg

ジュリアン・ラージはサブスクで聴いていつもいいなと思ってたんだけど、なぜかCDでは買い過ごしてきて。それでこの新作「Speak To Me」。先行公開されていた曲を聴いてすぐにオーダーしましたよ。

アメリカ―ナ路線の作品集で、ビル・フリゼールの「Good Dog Happy Man」を愛する僕としては、堪えられない作品だろうと大きく期待を膨らませて待ってたわけです。
もちろんその期待に応える素晴らしい作品とあいなりました。

ジョー・ヘンリーをプロデューサーに迎えているということで、ある程度音の感触みたいなものは想像していましたが、ジョー・ヘンリーをプロデューサーとしてそれほど評価しているわけではないので、若干の不安もあったのだけど、それは杞憂でしたね。

ジュリアン・ラージのパーマネント・トリオであるホルヘ・ローダーとデイヴ・キングに加えジョー・ヘンリー組のパトリック・ウォーレンを加えたカルテットを基本に曲によってピアノのクリス・ディヴィスとサックス/クラリネットのリヴォン・ヘンリーが加わる。

イントロダクションのようなソロ演奏による「HYMNAL」の後、ゴリっとしたギターがリズムを刻むロック・ナンバー「Northern Shuffle」でこのアルバムの個性をくっきり刻む。この曲のクリス・ディヴィスのピアノはザ・バンドでのガース・ハドソンのピアノ演奏を思い出しました。ロックンロール以前・以外の様々なピアノ曲の余韻みたいなものが感じられて。後半「76」のような曲での演奏は特にそう感じます。
カントリー・フォークな「Omission」はアクースティックにエレキも重ねて、「South Mountain」のギターはバンジョーのように聴こえますね。
全曲ラージの自作で、ラストのフォスターなんかを思わせる「Nothing Happens Here」の美しさには作曲家としての才も際立つ。

パトリック・ウォーレンはジャズ・ミュージシャンではないので、ジュリアンらの演奏に適度な色付けをするようで、アナログなストリング・シンセ?やリヴォン・ヘンリーの管がジャズ創世記の風景を呼び込むように聴こえてきます。リヴォンのサックスやクラリネットもガース・ハドソンの演奏を思い出させるんですよね。クリス・ディヴィスのピアノもアメリカ開拓時代の西部のバーの片隅に置いてあるような、そんなイメージ。どの曲もクリシェが取り払われて、別ヴァージョンというか、オルタナ・ヴァージョンというか。そんな佇まい。

所謂ジャズの大枠を取り払って演奏することによって、ジュリアン・ラージの演奏もより自由にジャズを表現しているようにも思えます。ラージの全ての作品を聴いてるわけじゃないけど、アメリカのギター音楽の源流を探っていくような試みをずっと続けてきた音楽家のように思っていたのだけど、ここでその試みがひとつの完成を見たように思う。完成という言葉はちょっと違うか。
ミュージシャンの選定といい自由に演奏させながら、バランスのいい作品集にまとめ上げたジョー・ヘンリーも良い仕事をしたな。

録音として残されていない頃のジャズに思い馳せてしまう、幻聴させてしまう、故きを温ねて新しきを知る、この言葉を地で行く傑作です。
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