SSブログ

名もなき民の精神との対話 [R&B/JAZZ/etc]

AtThisPointinTime.jpg

南アフリカのピアニスト、ンドゥドゥーゾ・マカティーニにブルーノートからの新作が今年のジャズの中ではすこぶる評判が良いです。僕も聴きましたが、南アフリカのジャズらしいスピリチュアルな高揚感のあるアルバムです。
そこで今日取り上げるのは、同じく南アフリカのベーシスト、ハービー・ツオエリの昨年11月に出た「At this Point in Time: Voices in Volumes」です。
ンドゥドゥーゾ・マカティーニも参加した1作目の「African Time」は「音楽航海日誌」にも載ってます。

前作「African Time」は残念ながら2曲しか聴いてないので比較はできませんが、本作はその延長線上にある作品だと思います。前作が2012年だったから9年ぶりの新作ということになりますね。

ペシミスティックなメロディのチャントのような歌が繰り返される「Wozani nonke Sizothandaza」でアルバムは始まります。
本人のベースに、ドラム、テナー&アルト・サックス、トランペット、トロンボーン、ピアノには2人のクレジットがありますね。それとチャントのような歌担当の5人。

全11曲で1時間半もあることからもわかる通り10分を越える曲が4曲あって、比較的長めの曲が多いです。ベテランらしく南アフリカらしい朗らかなメロディとハードバップの根が見える構成のスロー~ミディアムの曲を中心に、ゆったりと反復されるホーンのフレーズをバックにチャントが繰り返され、その中で紡がれるサックスやトランペットのソロが聴き手の心を軟かにときほぐし開放していきます。リズムが躍動する「Backyard Background」のような曲ではマラービの伝統ももちろん脈打っていますよ。

そしてその演奏はアフリカの神々との対話や捧げられた祈りというより、古の名もなき民の精神との対話のようにも感じられます。前作のタイトルであるアフリカン・タイム。それは始まりもなく終わりもない。終わりは始まり、始まりは終わりというようなアフリカの時間軸の中で、僕らは生きているのだという表明なんでしょうか。アルバムは讃美歌のようなチャントの「Siyabulela」で静かに幕を閉じます。
南アフリカのジャズを改めて捉えなおした大作です。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。