SSブログ

ストーリーテリングとアメリカ南部音楽 [ポップ/ロック]

12thofJune.jpg

ライル・ラヴェットの10年ぶりの新作「12th of June」は、ホレス・シルヴァーの「Cookin' at the Continental」ではじまる。一応カントリーという枠組みに入れられてる人だから初めて聴く人はびっくりするかもしれない。
シンガー・ソングライターなのに、こんなインスト曲ではじめるちゃうのもこの人らしい。トランペットやサックスの後に、スティール・ギター、フィドルとソロが続くあたりもラージ・バンドならでは。

ラヴェットのバックを務めるこのラージ・バンドという呼称は、ホーン・セクションだけじゃなくフィドルもスティール・ギターも、それにチェロやゴスペル・コーラスまでいますよってことでビッグ・バンドじゃなくて、ラージ・バンドってことなんですね。2007年のアルバムは「It's Not Big It's Large」なんてタイトルでした。

続くはタイトルからして彼独特のユーモアが感じられる「Pants Is Overrated」ラヴェットらしい曲。途中唱歌?みたいになるあたりクスッとしてしまう。
軽妙な「Straighten Up and Fly Right」はナット・キング・コールのカバー、続くは「Gee, Baby, Ain’t I Good To You」。5曲目「Peel Me A Grape」もブロサッム・ディアリーはじめ多くのシンガーが歌ったジャズ・ソング。ここまでの3曲はフランシン・リードとのデュエット。まったくご機嫌すぎますな。

とまぁ前半はカバー主体のラージ・バンドのジャジーな演奏をフィーチャーしています。
後半「Her Loving Man」はオールド・タイミーなカントリー・ワルツ。続いてピアノ主体の詩情溢れるアルバム・タイトル曲。
カントリー・ゴスペルなファンキーさがじわじわとくる「Pig Meat Man」もおかしなタイトルから歌詞が気になってしまう。
ラヴェットはストーリーテリングの伝統をカントリーやフォークの枠組みに囚われず、アメリカ南部の音楽的豊饒さに解き放ってきたんですね。本作ではそのソングライティングの円熟も感じます。

ピアノとストリングスだけをバックにした「Are We Dancing」は往年のアメリカン・ソングライターの系譜に連なるようなロマンティックなナンバー。
最後の飄々とした「On A Winter's Morning」を聴くに至って、ずっと頬が緩みっぱなしだったことに気づく傑作です。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。