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終わりは新しい始まり [ヨーロッパ]

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ポルトガルのアフロピアン、サラ・タヴァレスの8年ぶりの新作「FITXADO」が素晴らしい。
本作を聴いてすぐに気に入ったというか強く惹かれたんだけど、日本でもリリースされた前作「Xinti」すら僕は聴いたことがなかったんですよ。いや少しはYoutubeあたりで聴いたかもしれないけど。

だからこのジャケを見てあれ?こんな逞しい感じの人だったっけ?と思った。
もっとかわいらしいお嬢さんって印象があったから、実際以前のアルバムのジャケを見ると笑顔が可愛らしい感じだったし、音楽の方も春のそよ風のようなアコースティックで愛らしい音楽だった。そりゃもういい年になって苦い恋のひとつふたつありましたって感じかななんて思ったんだけど。

でも彼女の身に起こったことは苦い恋どころの話じゃなかったようだ。
彼女は前作発表後に脳腫瘍の手術を受けたという。脳腫瘍ともなると当然、死や人生といったことを深く考えざるを得なかったろう。本作発表までに8年もかかったのはそういう訳だ。

冒頭クールなリズム・トラックの「Intro - Onda de Som」が次曲「Só Sabi」にそのまま繋がっていく。以前のアコースティックでオーガニックな音楽性にエレクトロニクスやプログラミングも取り入れよりコンテンポラリーに仕上げたバック・トラックが印象的。

でも何より惹きつけられるのは彼女の声。
以前のような明るく朗らかなだけでない、憂いを宿した彼女の声。
とはいえ別に暗いというわけじゃない。ままならない人生を受け入れて生きていくしかない。諦念というかな。そんなものが緩やかなグルーヴの中で揺れている。

所謂アフロ・ポップっていうんじゃないけど、やはりカーボ・ヴェルデ移民2世ということは彼女のアイデンティティの大きな部分を占めるんだろう。70年代のソウル・ミュージックやルーツ・レゲエに通じるようなスピリチュアルな雰囲気もある。リズムなどにはそういった音楽がつづれ織りのように組み合わされて彼女の歌声を後ろ盾する。ここにあるのは広義の意味でのソウル・ミュージックだ。アフロピアン・ソウル。
同じくリスボンを拠点に活動するパウロ・フローレスとは接点も多いのだろう。彼を迎えた最後の「Flutuar」はセンバでもモルナでもなくアフロビートだったりするのが面白い。これがまたカッコいいんだよ。

タイトルはクレオール語で「閉じる」という意味のようだ。終わりは新しい始まり。そんな思いを込めたという。
それにふさわしい新たなサラ・タヴァレス。その歌声はしなやかに美しい。


本作もパウロ・フローレス同様、スポティファイで聴いてビビビッときてソッコーでダウンロード購入。でもポルトガルSONYからのリリースだから、CDも近いうち日本にも入ってくるんじゃないかな。
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コメント 2

bunboni

わ、早いなあ。まだポルトガルから届かないんですよ。楽しみにしているんですけれど。なんせ愛しのサラ嬢なので。
by bunboni (2017-12-01 23:30) 

Astral

bunboniさん

僕はこれが初サラ嬢みたいなもんですけど、以前の彼女とは印象を異にする本作、bunboniさんにはどう聴こえるんでしょう。
by Astral (2017-12-01 23:43) 

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