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ある奇特なコレクターの物語 [本]

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三十歳のケマルは一族の輸入会社の社長を務め、業績は上々だ。可愛く、気立てのよいスィベルと近々婚約式を挙げる予定で、彼の人生は誰の目にも順風満帆に映った。だが、ケマルはその存在すら忘れかけていた遠縁の娘、十八歳のフュスンと再会してしまう。フュスンの官能的な美しさに抗いがたい磁力を感じ、ケマルは危険な一歩を踏み出すのだった―トルコの近代化を背景に、ただ愛に忠実に生きた男の数奇な一生を描く、オルハン・パムク渾身の長篇。ノーベル文学賞受賞第一作。

以前から読みたいと思っていたトルコの作家オルハン・パムク。
ちょうど新作「無垢の博物館」が出たので読む。

上下巻2冊組の長編。
上巻を読み終わったときには、すでに主人公のしょうもなさにうんざりし、このウジウジとした独白が下巻も続くのかと思うと(実際同じように続く)、げんなりした。
とてもじゃないがこの主人公に自分を同化することはできなかったので、ひたすら長い小説だなぁと感じた。

下巻をうんざりしながらも読み進めているうちに、ひとつ思い出したことがある。
それは昨年エル・スールでCDを物色しているときのこと。店長の原田さんが他のお客さんと「コレクションというのは自分の中の欠落を埋めるもの」というようなことを話していた。
僕はギリシャ音楽の棚を眺めながら「なるほどぉー、そうかー。」と深く感じ入ってしまった。

この本の主人公も、愛する人を自分のものにできない欠落を彼女が使ったスプーンやタバコの吸殻、犬の置物などをコレクションすることに、彼女を愛するのと同様のもしくはそれ以上の喜びを見出していく(後年それが「無垢の博物館」の展示物になる)。
恋愛小説の体裁を借りたある奇特なコレクターの物語。
コレクターは自分の蒐集物についてあれこれと語りたくなるもの、これだけ長くなるのも無理もない。最後に本人が言うとおり、ある意味「とても幸せな人生を生きた」のかもしれない。

翻って我が家にあるCDやレコードはいったい僕のどんな欠落を埋めているのだろう?
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