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才気走る弩級ファンク [ポップ/ロック]

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ずっと苦手だったのに、なぜか最近俄かによく聴きだした吉田美奈子。
この90年作「Gazer」はあまり世評が高くないようで、気に留めてなかったんですけど、聴いてみれば仰け反るような弩級のファンク・アルバムでした。

彼女の熱心なファンは70-80年代の作品が好きなんでしょうけど、そのあたりはそもそもよく聴いたことない。ファンクとしては81年作「MONSTERS IN TOWN」が代表作として知られていますけど、声がちょっとキンキンしてる気がして腰がひけちゃう僕にとっては、こっちの方が好み。

でも本作は落ち着いてるわけじゃなくて、才気走ってるといってもいいかもしれないくらい尖がった作品です。録音はニューヨークで行われ、打ち込み主体ながら、バーニー・ウォレルやビル・ラズウェル、清水靖晃が参加。

イントロダクションの「WARNING」に続いて、重いドラムのビートに導かれるタイトル曲で始まり、皮肉の効いた歌詞の「友達」も強力なファンク・ナンバー。清水靖晃のフリーキーなサックスが炸裂する「STARLET」も尖りまくってます。

打ち込みのリズムがとにかく強力で、彼女の歌を堪能したい人には、かなり煩く聴く人を選ぶ作品かもしれない。彼女の音楽にあるいちげんさんを寄せ付けないような雰囲気が本作には多分にあるしね。
それでも中後半に置かれた珠玉のバラード「時間を見つめて」では歌の上手さを堪能できます。

本作は90年に自主制作の形でリリースされ、95年にメジャーから再発されましたが、その後四半世紀に渡って廃盤のまま。さすがに30年以上前の打ち込みは古さも感じるので、しっかりとリミックスして再発してほしいです。

それとブックレットというか歌詞カードが面白いんですよ。
見開きのポケットに収められたクリアフィルムに、図形と共に歌詞が印刷されています。こんなユニークな歌詞カードは初めて見ました。90年代の作品もブックレットが分厚くページごとに紙質を変えたりして、こういうパッケージにもこだわりのある人なんですね。
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