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1938年のエリントン [ひとりごと]

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図らずも最近買ったエリントンのCDのうち2枚が1938年に録音されたものだった。
「Braggin' in Brass: The Immortal 1938 Year」と「コットン・クラブ・アンソロジー 」。
前者は1938年の主にブランズウィックを中心とした録音をその年の1月から12月まで順に並べたもの(2枚組32曲)、後者は同年にコットンクラブに出演した時のラジオ放送音源を収録したもの。こちらも2枚組22曲。コットンクラブのラジオ音源に関してはラジオで放送された全音源を収録した輸入盤もあるみたい。スポティファイで聴ける。

ここ数週間この2枚を重点的に聴いてる。
後者はラジオ放送されたものだからわかるけど、後者はあえて1938年の録音を集めている。クロノジカルなシリーズのうちの一枚というわけではなくて、あえて1938年という年を選んで編んである。89年にCBSのPORTRAITというレーベルからのリリース。

他の年ではなくなぜ1938年なんだろう。はっきり言って前後の録音をまだそれほど聴いてないからよくわかんない。でもとにかくカッコイイんだよ。毎日聴かずにいられないくらいに。
よくわかってない奴の感想というのもそれはそれで面白いはずなので、ここらあたりでいくつか記しておこう。

この1938年の暮れにビリー・ストレイホーンがエリントンと出会い、翌年からバンドに参加する。そして40年にはジミー・ブラントンやベン・ウェブスターが参加するわけで、この1938年というのはある意味、青年期のエリントンの分岐点といえる年だったのかもしれないな。
20-30代の若き音楽家であったエリントンが同世代の仲間と一緒に無我夢中でレコーディングやライブに明け暮れた日々。

ストレイホーンやウェブスター、ブラントンあたりはエリントンよりもずっと年下だし、40年前後になると年若いミュージシャンを手足のように使いエリントンはもっと音楽監督っぽくなるのかもしれない。40歳前後になれば積み重ねた経験もあるだろうし。
タイトルにも冠された素晴らしいブラス・アンサンブルが聴ける「Braggin' in Brass」など一曲一曲触れていこうと思ったんだけど、長くなりそうなので今回は一曲「Skrontch」だけ触れておこう。
ブラスと共に跳ねるリズムにバーニー・ビガードのクラリネットが奔放に絡むイントロ。それに続くアイヴィ・アンダーソンのジャイヴィーな歌、ホッジズの豊かにうねるサックス、クーティ・ウィリアムス、レックス・スチュワート、ローレンス・ブラウンのトランペット。たった3分にも満たない曲の中にどんだけ聴きどころがあるんだよ!

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コットンクラブ・アンソロジーの方はライブだから当時のコットンクラブの様子なんかを思い浮かべながら聴いてます。ジャングル・サウンドをバックに半裸の女性が踊ったとかそういうのもまだあったんだろうか。
「コットンクラブ」っていう映画があったな。当時のコットンクラブの写真とかネットで検索すれば見つかるかもしれない。

「Braggin' in Brass: The Immortal 1938 Year」収録の曲もやってる。録音したばかりの新曲をやってたってことなんだな。そりゃやるのは当たり前のことだけど。他にもレコーディングされなかった曲もあるし、貴重な記録。転がるようなグルーブが狂騒を巻き起こす「Rockin' in Rhythm」などこちらも一曲一曲サイコーです。このアルバムのジャケはあまり見たことのないエリントンの写真で、カッコイイ。

2枚ともジャケも魅力的で、戦前ジャズの売り方というか魅力的に見せるためにもジャケは重要だよやっぱり。ともあれまだまだ聴き足りない。聴けば聴くほどもっと聴きたくなる。
でも戦前っていったって、10年代から40年代まで30年分くらいあるんだから、楽しいけど聴くのは大変。でも最近買ったCDを全然聴ききれてないのに安いので既に次から次へとオーダーしている。かなり重い病にかかってます・・・

33年の映像だけど、コットンクラブのショウもこんな感じだったのかな。

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としま

刺激されて、僕が持っている CD11枚組の1932〜40年のブランズウィックなどコロンビア系録音全集から、1938年分だけを聴き返してみました。この年には同じ曲の別テイクを含めると全部で43トラック発売されて聴けますが(録音されて発売されていないものが、まだある模様ですが、おそらくそれは廃棄された)、その二枚組が32曲というのは、別テイクは除いたマスター・テイクだけということなんでしょう。僕の持つ全集でもそうすると32個になります。

どうして1938年分だけなのかは、たぶんこの年が戦前のコロンビア系録音ではエリントンが最も充実していたからですね。もっとも38年1月13日の同年初録音の一個前のセッションである37年9月20日には、「ディミニュエンド・イン・」ブルー」 「クレッシェンド・イン・ブルー」という二大超傑作がありますので、やはり聴き逃せませんが。

1938年録音だと、話題にされている「Skrontch」は、その二枚組でも記載があると思うんですが、当時の SP 盤である Brunswick m8093での曲名記載で、こんな英単語はありませんので、本当は「Scrounch」です。僕の持つ全集附属のディスコグラフィーでも訂正されて、併記されています。確かにこれは見事な一曲。

なお、この「スクローンチ」も2テイク録音・発売されていますし、また「ブラッギン・イン・ブラス」も2テイク録音・発売されていて、現在どっちも聴けますが、やはり傑作。

1938年で僕が一番好きなのは、やはり一番有名でもあるエキゾティック・ナンバーの「ピラミッド」ですね。これはモダン・ジャズ・メンもしばしばカヴァーするので、やはり魅力的なんでしょう。この曲も2テイク録音あり聴けます。

また同じ1938年の「アイ・レット・ア・ア・ソング・アウト・オヴ・マイ・ハート」はスタンダード化していて、若き日のスティーヴィー・ワンダーも歌ってますね。

こんなエリントンの表面的なかたちではなく本質を受け継いで現代化し表現したのはファンカーたち、特にP ファンクの連中なんじゃないかというのが、僕の見方です。

『コットン・クラブ・アンソロジー』の方については、また今度。
by としま (2016-12-22 23:35) 

Astral

としまさん

ブランズウィックってコロンビア系の会社なんですね。今頃ようやく認識しました。38年以前のものももっと聴きたくてJspから出てる4枚組をオーダーしました。それに「ディミニュエンド・イン・ブルー」 「クレッシェンド・イン・ブルー」は収録されてるので、届くのが楽しみです。
この盤にはなぜか「Rose of Rio Grande」だけ2テイク入ってますが、他の曲のテイク違いもぜひ聴いてみたいですね。

エリントンの曲ってスタンダードとして現在も毎日世界中で演奏されていると思うんですけど、そのサウンドというか音楽全体を再解釈・再構築しようという試みをしている人はどれだけいるんでしょうかね。
Pファンクなんかはエリントンの音楽にあるような、黒人音楽が元々持っていた雑多な要素が、雑多なまま投げ出されていて確かに共通する感覚がありますね。

ただ僕はもっと意識的にエリントンの音楽をテーマにした作品を聴いてみたいなぁと最近とみに思います。ドクター・ジョンの「デューク・エレガント」みたいな。
このことについてはまた記事にします。
by Astral (2016-12-23 13:43) 

としま

1930年くらいまでのブランズウィックはデッカ系です。エリントン楽団はその時代のブランズウィック録音もたくさんありますので、それはデッカからCD三枚組で全集になっています。

デッカ系であれコロンビア系であれヴィクター系であれ、ビリー・ストレイホーン加入前のエリントン楽団では、僕は1929年までの巣年間が一番好きです。R&B〜ロック・ファンにもそのあたりが一番評判がいいようです。それは僕も分ります。
by としま (2016-12-23 14:57) 

Astral

としまさん

あぁーそこらへんがなんだかややこしくて、いつもCD買うのに曲目とディスコグラフィーとにらめっこしてます。

20年代の録音もJspの4枚組をオーダーしてあります。リズムとかロック的なんですかね。とにかく届くのが楽しみです!
by Astral (2016-12-23 19:04) 

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