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闇夜に思いを紡いでゆく歌 [ポップ/ロック]

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中森明菜の2003年作「I Hope So」。これも既に廃盤で手頃な値段で入手するために随分時間がかかってしまった。これで90年代以降のオリジナル・アルバムは揃ったので、一段落かな。80年代の作品はまだ半分くらい残ってるけど、おいおい聴いていこう。

本作はバラード・アルバム。プロデューサーも務める武部聡志による4曲のインタールードもあり、一種のコンセプト・アルバムと言っていいかも知れない。音楽的には前作「Resonancia」と比べると、年嵩のファンもついてこられるちょっとコンサバな作品かな。

インタールードに続いて始まる「Rain」「虹」共に落ち着いた歌声で、かつて感じだ痛みや流した涙をいまいちど反芻するような歌が聴き手の胸にしっとりと残る。
バラードアルバムとはいえ、しっとり系の曲ばかりじゃなく、「風の果て」は広い大地と空を感じさせる颯爽とした曲だし、タイトル曲「i hope so」は自身の作詞で、力強い決意表明的な歌詞のロッカバラード。
「夕闇を待って」はボサノバ調。こういう曲をサラッと軽く歌いたいんだろうけど、事実そう歌っているんだけど、彼女には今ひとつ似合わない。どこかチグハグな印象を受ける。明るさを装っているというか、取り繕っているように聴こえてしまう。

このアルバムの聴きどころは後半の「紡ぎ唄」「うつつの花」あたりだろうか。
サビでの鮮やかな転調が印象的な「紡ぎ歌」は思わずコード進行を確認したくなるような曲。
作詞作曲を担当した川江美奈子を調べてみると、シンガー・ソングライターなんですね。ついでにバークリー音楽院卒。道理で技巧的な曲なわけだ。武部聡志のアレンジもよく、特にサビでの転調と共にストリングスが入ってくるところなどは、歌詞にある「昨日と今日」「夢とうつつ」をすり抜けていくよう。間奏のジャジーなピアノも美味だし、「♫闇夜に思いを紡いで♫」ゆくような彼女の憂いのある歌声も素晴らしい。曲・アレンジ・歌、三拍子揃った間違いないく本作のハイライト。

続く「うつつの花」も聴きごたえがある。ある意味彼女の定番的な曲調の情念歌謡だ。こういう情念を感じさせる歌を歌える人はもう若い歌い手さんにはいないしね。
沈鬱な曲調に青白く揺れる炎をはらんだ歌声が映える。かつてと違うのは激情をより深く潜ませるようになったこと。聴くほどにこたえる。

音楽的新味はないけど、丁寧に製作されたのはよく伝わって来るし、彼女の憂いのある歌声を堪能できるアルバム。個人的には「紡ぎ唄」「うつつの花」、この2曲を聴くためのアルバムです。佳作。
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naka

astralさん、こんにちは。

こちら、まだ入手しておりません。

ジャケットのデザイン、確認出来ました。
なにか似ているものがあったような記憶がありますが、思い出せません。 

まずまずのバラード・アルバムですか。

Resonancia と Distination の間ですから、是非聴いてみたいですね。


(拙ブログ、閉鎖します。お世話になりました。。。貴ブログ、引き続き、拝見させていただきます。)
by naka (2015-02-22 17:53) 

Astral

nakaさん

探し回って聴くほどではないですけど、見つけたら聴いて損はない作品といったところですかね。

ブログ閉鎖。残念です。
が、無理してやるものでもないですから。当ブログへ気になった記事ありましたらコメントお寄せください。私は当分やめるつもりはないので。これかもご贔屓に。
by Astral (2015-02-22 19:25) 

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