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ソウル~ブラコン仕様ゴスペル [R&B/JAZZ/etc]

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ピーコック音源の4枚組「Classic Gospel 1951-1960」は自分でも意外なほど愛聴しているんですが、そろそろ時期的にその後の年代のゴスペルも聴いてみたいなぁと思いまして。
そこで以前から候補に挙げていた、「A Stranger I May Be (Savoy Gospel 1954-1986)」を購入。
これイギリスのオネスト・ジョンズが出てるんですよね。オネスト・ジョンズというと、カリプソのコンピ「London Is the Place For Me」とか良い仕事をするレーベルとして知られていますが、この3枚組も素晴らしい編集盤です。

ゴスペルに詳しくないので、これを聴いていたら、あれ?この曲って?レイ・チャールズじゃん。
要するに歌詞を変えてゴスペルに仕立てた曲がいっぱいあるんですね。替え歌というか。
サム&デイブにスティーヴィー・ワンダーやスライ&ファミリーストーンとか。
当時のヒット曲をゴスペルにしてるんですね。だからこの年代になるとゴスペルと言っても音楽的には当時のソウル~ブラコン仕様なんですよ。だから歌詞が直接わからない身としては普通のソウルと同じ感覚で聴けます。

ステイプル・シンガーズやソロモン・バークなどポピュラー・シーンでも活動した人も入ってますが、ゴスペル世界だけって人もいっぱいいるので、ほとんどが初めて聴くグループ、歌手ばかり。さすがゴスペル出身の人達は歌える人いっぱいいるなぁ。声が強いというか。
良い曲を厳選してるせいか飽きることなく聴きとおせます。ブック形式の装丁といいリイシューの鏡のような素晴らしい3枚組です。
こうなるとこの後90年代以降現在までのゴスペルにも興味が沸いてきましたよ。
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生真面目さも良しのラテン・ジャズ [R&B/JAZZ/etc]

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ブライアン・リンチの新作「Songbook Vol​.​2: Dance The Way You Want To」。
自作曲を集めたアルバムでSongbook Vol​.​2とありますが、昨年出たVol.1は普通のジャズで、本作は私の好物であるラテン・ジャズ作になってます。

Spheres Of Influenceというグループとの共同名義となっていて、パーカッション入りのクインテットに曲ごとに異なるサックス奏者が加わる編成。ラテンバリバリって感じでもなく、クールでジャジーな良い塩梅のラテン・ジャズ作に仕上がっていて、気分よく聴けますね。どの曲も比較的長い演奏時間で、プレイヤーのソロもたっぷりと味わえる。

ブライアン・リンチはかっちりとまとまった曲とアレンジが、正直ちょっと生真面目過ぎて面白みに欠けるんですよね。このアルバムもそうなんだけど、まぁ優等生がしっかりと期待されるとおりの結果を出した作品って感じですかね。全然褒めてるように聴こえないかもしれないけど、秀作です。

CDだと2枚組で、追加曲ではなく、全曲のラジオ・エディットと称する短縮ヴァージョンが入っていて、これって何の意味があるんだろう?一枚でいいのに。
あと、グラミー受賞作「The Omni​-​American Book Club: My Journey Through Literature In Music」と同じ人だと思うけど、ジャケのイラストが良いな。
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R&Bならではの妙味に溢れた [R&B/JAZZ/etc]

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マニー・ロングの1stアルバム「Public Displays Of Affection: The Album」。
もともと昨年発表した同タイトルのEPを、その後に曲を追加してミニ・アルバム?にして、「HRS & HRS」のヒットによりデフ・ジャムと契約して、さらに曲を追加して18曲のアルバムと相成りました。

18曲も入ってるけど、54分程度なのが、今どきらしい。
ほとんどの曲が3分くらいしかないんですよ。最近の曲は間奏とかないから。でも音楽の趣はスタンダードなR&Bらしいところがこの人の個性。というかソングライターとしてそれなりのキャリアと実績もある人ですもんね。

フックの効いた曲作りがやはり上手い。
どの曲ももしかしたら他の人が歌ったらもっと名曲感が芽生えたりするのかも。歌手として強く刻印を刻む人じゃなく、ソングライターとして曲の良さを伝えるような歌。だから聴いてて疲れない。歌ヂカラに捻じ伏せられるより、歌の情感が持つグルーヴに心地よく身を任せるがよろしいかと。
R&Bならではの妙味に溢れた味わい深い上々のデビュー作です。
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トラップをメロウネスで濾過したビタースウィート [R&B/JAZZ/etc]

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エラ・メイの新作「Heart On My Sleeve」。
前作同様、マスタードを中心に楽曲プロデュースされた本作、「Boo’d Up」のような必殺の曲はありませんけど、彼女の魅力が良く伝わる佳曲が多く、アルバムとしての充実度は前作よりも上のような気がするな。
前作もよく聴いたんですけど、モノローグのような彼女のしゃべりが所々に入っていて、何度も聴いてるとちょっとそれが邪魔というかね。

冒頭の「Trying」が良い。エレピやストリングスなど音の抜き差しが上手いよねマスタードは。
まったくアナウンスがなかったので、「Fallen Angel」で後半カーク・フランクリンの声が聞こえた来たのはちょっとびっくり。こんな曲がゴスペルに変貌するのかという構成にも唸る。
前作ではブーンという低音がトラップの時代を象徴してましたが、そしてそこに90年代R&Bの香りが漂うとこが新鮮で。今回はトラップをメロウネスで濾過したビタースウィートな味わいって言っときましょうか。

タイトルは心の内を明かすという意味。丁寧に配されたピアノやシンセなどのひとつひとつの音が、情熱を内側にグッと閉じ込めたような彼女の歌声をより一層浮かび上がらせる新作です。
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古のアフリカの精神との対話 [R&B/JAZZ/etc]

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ジャズが続きます。
南アフリカのピアニスト、ンドゥドゥーゾ・マカテーニの「In The Spirit of Ntu」。これももちろん聴いてます。
ピアノとヴァイブのユニゾンにドラムとパーカッションのポリリズム。管楽器の合奏やソロ、ピアノの打鍵音が散発的に絡みながら、抽象的にも具象的にも姿を変える像を描いていく。
躍動的な曲と内省的な曲が交互に配され、チャントのような歌は古のアフリカの精神と対話するよう。

こういう南アフリカのジャズを聴くと、どうしてもこういうイメージが湧くんですよね。それと欧米ののアフロ・ジャズと呼ばれるものがどれほど想像の産物かということも感じますね。あれはあれで面白いんですけど。
こっちの方が地に足の着いた力強さを感じるのも事実ですよね。アメリカで生まれたジャズがアフリカの地で先祖返りというか、土着化していくみたいな。

本作は精神が外に飛び出していくのと内に潜っていくような感覚が同時にやってくるところが、アフリカ的と言えばいいんでしょうか。2022年のジャズ屈指の作品との呼び声も納得です。
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腕利き達の演奏者としての力量 [R&B/JAZZ/etc]

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トランペット奏者、マーキス・ヒルのライブ盤「New Gospel Revisited」。
本作は、2012年のデビュー作を新たなメンバーで演奏したライブ盤。録音は2019年。デビュー作を聴いてないので、比較はできません。
マーキス・ヒルって名前は聞いたことあったけど、どんな人だっけ。と思ってチラッと他もさわりだけ聴いたけど、ヒップホップとかのリズムも使った。イマドキな感じの人でした。

僕が本作に興味を持ったのは腕利き揃いのメンツ。
ジョエル・ロス、ケンドリック・スコット、ウォルター・スミスⅢ、ジェイムズ・フランシーズ、ハリシュ・ラガヴァンという最近のジャズの注目盤を聴けば必ず名前が見つかる人たちですよね。

それで聴いてみたら、なんか70年代のブラック・ジャズのような黒々としたグルーヴ漲る音におぉっと身を乗り出しちゃいました。こういうの好きだったんですよね。セシル・マクヴィーとか思い出しちゃいました。演奏力の高いプレイヤー達が思う存分、その力量を発揮しています。ジャケにも現れている宇宙指向?もブラック・ミュージックの伝統ですね。

最初の「Law & Order」からして14分、他の曲も比較的長い演奏で、たっぷりとジャズならではの醍醐味を味わえます。「Autumn」のような抒情的な曲での美しいアンサンブルも聴きもの。曲の途中にインタールードのようにそれぞれのソロ演奏が添えられていますが、それぞれのアルバムではコンセプトやコンポジションに気を取られてしまう有能な演奏者たちの、一人の演奏者としての素顔が見える熱気あふれるライブ盤です。
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繊細なコンポジションと躍動するリズム [R&B/JAZZ/etc]

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もう10月、今年もあと3か月。
そろそろちゃんと新譜も取り上げておかなきゃ。

スペイン、マドリード出身のピアニスト、マルタ・サンチェスの「Saam (Spanish American Art Museum)」。ニューヨークで活動してる人で、はじめて聴く人ですが、気に入りました。
ジャズは相変わらず、次から次へと先進的な人が出てきて聴くのが追いつかないですけど、この人の場合、リズム・フィギュアがオーソドックスなので、作曲やソロに注意して聴く、所謂普通のジャズとして聴けて新鮮でした。かといってただのモダン・ジャズってわけでもなく。

アルト、テナーのフロント2管のクインテット編成。一曲目からパワフルなリズムが躍動的で耳を奪われます。手数が多いポリリズミックなところはいかにも現代ジャズですね。柔らかで繊細なピアノを弾く人で、しっかりと構成された繊細な曲が、そのパワフルなリズム隊によって後押しされるようにバウンドして立体的に目の前に浮かび上がる。

勝手ながら彼女がマドリードからニューヨークに渡ってきたのはこのストリート感ある生々しいグルーヴが欲しかったからじゃないのだろうかなんて思いました。フロントのローマン・フィリウとアレックス・ロアのウネウネと続いていくソロもスリリングです。

1曲アンブローズ・アキンムシーレがトランペットを、カミラ・メサが歌うバラッドがある。アルトのローマン・フィリウは確かキューバ出身じゃなかったっけ。ニューヨークのスペイン・コネクションみたいな結びつきもあるんでしょうね。秀作です。
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ニューオリンズのベテランから若手まで [R&B/JAZZ/etc]

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ここ数か月、手持ちのレコードやCDばっかり取り上げてますが、新譜もあれこれ聴いてます。じっくりレビューするのをさぼってると、長い文章を記すのが面倒になっちゃうんですよ。いかんいかん。

では今日は新譜を。
ニューオリンズ音楽のドキュメンタリー映画「Take Me To The River: New Orleans 」(マーティン・ショア監督)のサントラ盤。
2014年にメンフィスをテーマにした同タイトルの映画があって、そこから今度は新たにニューオリンズにテーマをうつして制作されたようです。
映画は日本では公開されてないので、まったく話題にもなってないですが、僕も今回のニューオリンズ編ではじめて知りました。アマゾンプライムで見れるらしい。

メンフィス編のサントラ盤もなかなか良いんですが、ボビー・ブランドやオーティス・クレイが歌ってラップが絡むというのが多くて、ニューオリンズ編の方が音楽的に多彩なこともあり、2枚組のボリュームでベテランから若手までをフィーチャーした現在のニューオリンズ音楽をヴィヴィッドに記録した最高の編集盤となってます。全曲この映画のために録音されたものです。

アルバムの幕開けはシリル・ネヴィルがニューオリンズへの愛情たっぷりに歌う「 In Love with My NOLA」。一応説明しておくと、NOLAっていうのはNew Orleans, Louisianaってことね。
続くはニューオリンズ・バウンスのクイーン、ビッグ・フリーディアがギャラクティックをバックにラッパー二人を従えぶちかましてくれます。
3曲目はネヴィル・ブラザーズがかつて自分たちが演奏を引き受け制作した「 (Hey Mama) Wild Tchoupitoulas」を。チャールズが2018年、アートが2019年に亡くなってますが、ここでは4兄弟そろっているので、この映画自体かなり前から時間をかけて制作されていたみたいですね。
たぶんどの曲もスタジオライブ形式で録音されてるようで、Youtubeの公式チャンネルに録音時のスタジオの様子がいっぱいあります。

4曲目はニューオリンズの新旧歌姫、アーマ・トーマスとレディシのデュエット。こうして延々と一曲一曲触れていくと長くなっちゃうな。
以降もヒップホップ世代ブラス・バンド、ソウル・レベルズがオーソドックスなスタイルでラップをフィーチャーした曲やウォルター・ウルフマン・ワシントンがファンキー・ブルースをかましたり、ドクター・ジョンはダヴェル・クロフォードとのピアノ・デュオで「Jock-A-Mo」(って曲表記されてるけど、「アイコ・アイコ」です)と「Someone to Love」(こっちはパーシー・メイフィールドのね)を。

現在のニューオリンズの顔役PJモートンは自身のアルバムでより以上にニューオリンズらしい「New Orleans Girl」をリバース・ブラス・バンドと快演。
多くの曲でミーターズのジョージー・ポーターJrがベースを弾き、アイヴァン・ネヴィルも多くの曲に参加してますが、アール・キングのカバー「Street Parade」は自身のバンド、ダンプスタファンクで叔父シリル・ネヴィルが歌います。

「Yes We Can Can」は、ウィリアム・ベルが歌いスヌープ・ドッグとGイージーがラップして、あのリズムはそのままにしっかりアップデートされてますよ。
他にもマルディグラ・インディアン・スタイルのポール・サイモンのカバー「Late in the Evening」やアニ・デフランコがロスト・バイユー・ランブラーズをバックにケイジャンをやったり、ドナルド・ハリソンは息子孫世代と一緒にスタンダードかつファンキーなディキシー・ランド・スタイルを活き活きと披露。

こんな具合に、最初から最後まで快演が続く素晴らしいアルバムなんですよ。
ニューオリンズというと、やっぱりドクター・ジョン、ミーターズ、アラン・トゥーサン、セカンドライン、ジャズ&ヘリテイジ・フェスに行ってみたいなぁってな古参ファンと、PJモートン、ジョン・バティスタ、ニューオリンズ・バウンス、エッセンス・フェスっていう若い音楽ファンとに二分されてしまうと思うんですけど、特に日本では。
でも実際はその二つに隔たりなんてないんですよね。
それを如実に示すニューオリンズ音楽好きな人もあまり馴染みのない人にも大推薦のサントラ盤です!
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名もなき民の精神との対話 [R&B/JAZZ/etc]

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南アフリカのピアニスト、ンドゥドゥーゾ・マカティーニにブルーノートからの新作が今年のジャズの中ではすこぶる評判が良いです。僕も聴きましたが、南アフリカのジャズらしいスピリチュアルな高揚感のあるアルバムです。
そこで今日取り上げるのは、同じく南アフリカのベーシスト、ハービー・ツオエリの昨年11月に出た「At this Point in Time: Voices in Volumes」です。
ンドゥドゥーゾ・マカティーニも参加した1作目の「African Time」は「音楽航海日誌」にも載ってます。

前作「African Time」は残念ながら2曲しか聴いてないので比較はできませんが、本作はその延長線上にある作品だと思います。前作が2012年だったから9年ぶりの新作ということになりますね。

ペシミスティックなメロディのチャントのような歌が繰り返される「Wozani nonke Sizothandaza」でアルバムは始まります。
本人のベースに、ドラム、テナー&アルト・サックス、トランペット、トロンボーン、ピアノには2人のクレジットがありますね。それとチャントのような歌担当の5人。

全11曲で1時間半もあることからもわかる通り10分を越える曲が4曲あって、比較的長めの曲が多いです。ベテランらしく南アフリカらしい朗らかなメロディとハードバップの根が見える構成のスロー~ミディアムの曲を中心に、ゆったりと反復されるホーンのフレーズをバックにチャントが繰り返され、その中で紡がれるサックスやトランペットのソロが聴き手の心を軟かにときほぐし開放していきます。リズムが躍動する「Backyard Background」のような曲ではマラービの伝統ももちろん脈打っていますよ。

そしてその演奏はアフリカの神々との対話や捧げられた祈りというより、古の名もなき民の精神との対話のようにも感じられます。前作のタイトルであるアフリカン・タイム。それは始まりもなく終わりもない。終わりは始まり、始まりは終わりというようなアフリカの時間軸の中で、僕らは生きているのだという表明なんでしょうか。アルバムは讃美歌のようなチャントの「Siyabulela」で静かに幕を閉じます。
南アフリカのジャズを改めて捉えなおした大作です。
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海風に素顔をさらして [R&B/JAZZ/etc]

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海辺でずいぶんとナチュラルな表情をしているジャケが印象的なケラーニの新作「Blue Water Road」。デビュー作でのタトゥーだらけの肌をさらしていた頃とは別人とは言わないまでも、かなり印象を異にするのは確か。

前作はトラップの時代を象徴するようなダウナーな雰囲気の中に濃厚な官能性を忍ばせたアルバムでした。ジャケも日常の中に潜む不穏なものの存在を見る者に感じさせようとしているようでした。
本作ではトラップから脱却し、もっとスピリチュアルでオーガニックなグルーヴに変化しています。トラップからの脱却は最近のR&Bシーン全体からも感じられますけど。

実際アクースティック・ギターのストロークに導かれる「little story」から始まるポップ・ワンゼルによる音作りもドラムの音など、打ち込み臭が感じられずやけに生っぽい印象。曲間がほとんどないので、アルバム・タイトルに現れている統一された世界観も強く感じられます。

ジャスティン・ビーバーとのキャッチーな「up at night」、鼓動のように鳴り響くバスドラの音に高揚させられる「Alter」、ラリー・ゴールド編曲のストリングスが美しい「everything」、軽やかに惑い彷徨う「wondering/wandering」など、ジャケどおり海風に素顔をさらしたケラーニに出会える新作です。
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