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祝福と呪いを豊饒なグルーヴに [アフリカ]

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あけましておめでとうございます。
年末にちょろっと行った小旅行についても備忘録として記しておきたいんですが、とりあえずそれは置いといて。

パウロ・フローレスがプロディジオというラッパーとの共同プロジェクト、エスペランサ名義で「A Bênção e a Maldição」を昨年11月にリリースしてました。ジャケットとタイトル「祝福と呪い」からも伺われるとおり、シリアスなメッセージ性の強い作品になっています。社会における貧富の差なんかをテーマにしているようです。

無伴奏で歌いだされる1曲目「História」から、意味は分からなくとも言葉に耳を傾けさせる音作りで、アコースティック・ギターにベースとドラムだけの簡素な演奏をバックに沈鬱に歌われるメロディ、プロディジオのラップはラップというよりポエトリー・リーディング的で、それもやはり聴き手を言葉にフォーカスさせる要因になっています。後半、ホーンが入ってくるとよりアジテーションのような様相を帯びる。

シリアスなメッセージを中和するように2曲目の「Nzambi」はレゲエのニュアンスのある豊饒なグルーヴに、パウロ・フローレスの音楽家としての懐の深さを感じずにいられません。

以降も比較的シンプルなアンサンブルながら、哀愁漂うメロディに乗せて言葉を慈しむように歌うパウロ・フレーレスと思いのたけが溢れるようなプロディジオのラップが対照的ながら、豊かなアンゴラの音楽的土壌に想いを馳せさせる作品になっています。

「Viola」や「A Vida É Curta」なんか、センバがサンバの語源だということに深く頷いてしまう美しい詩情に溢れていますよ。王道のセンバ「Kafrique」は訴求力抜群のパウロ・フレーレスの歌にほれぼれと聴き入ってしまう。
全8曲32分と短いんですが、懐深い素晴らしい作品だと思いますよ。
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ドリーミーなヴァイブの南ア・ディープ・ハウス [アフリカ]

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ブラック・モーションの新作でも歌っていたシミーの新作「Tugela Fairy (Made Of Stars)」も素晴らしい。前作同様、顔面どアップのジャケですが、前作とは全然違うお伽の国から抜け出てきたような(ズールー的でもある?)メイクがインパクト大。前作のタイトルも「Tugela Fairy」でしたが、今回はMade Of Starsがついてますけど、どういうことなんでしょう。一種のコンセプト・アルバムみたいなもんでしょうか。

浮遊感のあるグルーヴは前作同様ですが、1曲目からしてファンタジー映画のオープニングみたいで、よりドリーミーな架空の物語を語るような不思議な質感があります。ポジティブなヴァイブというより、ドリーミーなヴァイブを感じます。ハウスを聴いてこんな気分になったのは初めて。
その架空の物語の隙間から真実がリアルなエモーションを伴ってこぼれ落ちてくるというか。シミーの歌もそんなたゆたうようなグルーヴの中でいくつも声を積み重ねて、祈りのようなエモーションを伝える。そうゴスペルっぽいフィーリングを感じます。

ブラック・モーションのような多彩なリズム・フィギュアではなく、表向き4つ打ちのディープ・ハウスが基調になってますけど、細やかなリズムの組み立てはやはり南アの豊かな音楽的遺産を感じさせますね。

後半、南ア・ジャズを思わせる生っぽいホーンが入ってくるところもハッとさせられた。
ブラック・モーションほどではないにせよ、本作も1時間12分もある大作。今更ながらアフリカ音楽のステレオタイプを壊してく傑作です。これもベストに選出したかったな。

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南ア・アフロ・ハウスてんこ盛りの超大作 [アフリカ]

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南アフリカのハウス・ユニットBlack Motionの新作「The Healers: The Last Chapter」がすんごい。
何がすごいって41曲もはいってて、時間にしてなんと3時間48分!

昨日今日ととりあえず、部屋で流しっぱなしにしてました。
そんな聴き方だったんで、曲ごとの感想なんて言えないですけど、お腹いっぱいどころじゃないアフロ・ハウスのてんこ盛りですね。最後の方まで聴いて曲目を確認してみれば27曲目以降はエディット・ヴァージョンで、本編は26曲みたい。

南アでは以前からハウス・ミュージックが盛んでしたが、僕はそれほど聴いてるわけじゃなくて、この音楽の中にどれだけ南ア音楽の遺産が継承されてるのかについても言及することはできません。
それでもリズム・フィギュアの多彩さを見ても、英米のハウスとは違うことくらいはわかりますよ。やっぱりエレクトロニックなのに妙に生々しいというか剥き出しに感じられるリズムが面白いですよね。

ほぼ歌入りなので、どの曲もゲストが参加してます。
僕が知ってるのはSimmyとTRESORくらですが、南アのハウス・シーンの代表的な人はほぼ顔をそろえてるんじゃないかってくらいゲスト参加がいっぱい。
部屋を暗くしてずっと流してると南アの真夜中のクラブで踊ってるような気分になれそう。

このタイトルからすると何かコンセプトがあるような気もしますね。だからこの曲数なのかもしれないけど、それもよくわかりません。とりあえず本作を聴けばアフロ・ハウスはもう十分と思えるような超大作です。

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インド洋のあっち側とこっち側 [アフリカ]

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今年の4月ぐらいだったか、愛聴盤であるマレーシアのジャミーラ・アブ・バカルを聴いてるうちに、もっとこういうの聴きたいなぁとムラユー歌謡への想いが高鳴りまして。以前から思ってたんですけど、どうも上手く見つけられない。ストリーミングでは全然見つけられないし、あの手の古いアジア音楽はどうもストリーミングではほとんど聴けないですよね。CDも見つからない。

僕が聴きたいのはA.Kadirという人なんですけど、CDは入手が困難で、大阪のプランテーションのHPにもうすぐ入荷という情報があったんですが、コロナの影響か全然入荷せず。Youtubeでなら色々聴けるんですけどね。ずーっとあぁ心おきなく聴きたいなぁと思い続けていたんですよね。

そんな時に出会ったのが、インド洋の向こう側であるザンジバルのシティ・ムハラム。
ターラブの伝説的歌手、シティ・ビンティ・サアドのひ孫だそうです。そもそも僕はターラブってちらっとしか聴いたことないんですけど。

ここ数年、いや10年くらいですか、マレーシアやインドネシア、他にもギリシャなどの音楽に時折合われれるアラブ的な薫り、旋律に静かに心惹かれるようになっていたんですよね。
それはある種のエキゾチシズムに惹かれるというような部分もあるんですけど。

このシティ・ムハラムについて僕が語れることは多くない。
ノルウェイ人ベーシストによるグルーヴィな演奏も、全体のグルーヴで聴かせる録音も現代的に響かせるおおきな理由のひとつなんでしょう。
インド洋のあっち側とこっち側、ムラユー歌謡をむさぼり聴けるようになるまで、いやなっても愛聴するであろう傑作です。
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アフロビーツの指針 [アフリカ]

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スポティファイの新譜にティワ・サヴェージとサム・スミスのコラボ曲が出てきたときはびっくりしましたねぇ。一瞬同姓同名の別人かと思いました。そのコラボ曲を含む新作「Celia」がリリースされました。

僕は評判だった前作がいまひとつピンとこなかったんですけど。M.I.A.みたい。欧米っぽくなりすぎじゃない?なんて思ってたんですが、実際はジュジュやアフロビートなどがつづれ織るように編み込まれた新世代のナイジャ・ポップだったんですね。

最近は新世代アフロ・ポップにも慣れてきたので、今回は素直にカッコイイ。
新作は既にひとつのジャンルとしても定着しつつあるアフロビーツ全開のアルバムとなりました。
ストリーミング時代に生まれたジャンルらしく、シングル主体でいろんな人がさみだれ式にリリースして、いまだアルバム単位で聴く習慣がある僕なんかはちょっと聴きにくいという感じもあるんですよね。スポティファイやYoutubeのプレイ・リストとかで聴くのが正しい聴き方なのかもしれない。だからこうして一本筋の通ったアルバムとしては待ってましたって感じです。

クールにゆるゆると進む音楽を聴いてると、アフリカン・ポップの様変わりも感じます。とはいえこのクールネスはブラック・ミュージック特有のものでもあるか。
個人的にはアフリカらしいポリリズムと欧米のビート・ミュージックがインターネットの普及で即時的に混交・交配していく様が見えるようなところがスリリングに感じています。

「Celia」ってのは彼女の母親の名前だとか。ラストのタイトル曲は母の名前を借りてアフリカ女性を湛えるような、静かな歌声が耳に残る。
アフロビーツのひとつの指針となるような作品じゃないでしょうか。

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凛とした歌声が映えるンバラ [アフリカ]

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今年ンバラは、いやアフリカはヴィヴィアン・チディッドでキマリだったんですが、同じくセネガルからTITIの新作「Ay Nammante Lë」も良い。前作はAfter youでも紹介されてました。本作は昨年リリースですけど。

ヴィヴィアン同様、本作もフィジカルでのリリースはないようで、セネガルではCDでのリリースがほんと少なくなってるみたいですね。
僕は前作は未聴なんですが、とにかくパワフルで女王の貫禄たっぷりなヴィヴィアンと比べると、ティティの方は凛とした歌声が印象的です。

イマドキらしく曲によって打ち込みも交えたタイコの乱れ打ちの中で映える、しなやかに震える歌声は素晴らしいですよ。1曲ある英語タイトルの曲打ち込みのエレクトロ風?ンバラでアクセントとしてこれはこれで面白い。
アフロビーツなのも良いけど、セネガルはやっぱりこういう正調ンバラに結局ほだされてしまいます。
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パワーもしなやかさも据え置きのンバラ・クイーン [アフリカ]

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年も明けて2か月が過ぎ、続々と新作も出揃ってきましたね。
1-2月は昨年購入作を聴くことが多かったのが、ここにきて新譜聴きに追われてます。
聴くのに忙しくて記事にしてないんですけど、ジェネイ・アイコに続いて紹介するはこれ!

ヴィヴィアンの新作ですよ!タイトルは「Benen Level」。
最近はViviane Chididって名義みたいですけど。
5年ほど前だったかにミニ・アルバムがありましたけど、フル・アルバムは2010年の「WUY YAAYOOY」から10年ぶりですよ。シングルはちょこちょこ出してたので、活動はバリバリしてたんでしょうけど、待たされたなぁ。

ンバラの新作とか話題作とかいくつかあったと思いますけど、僕はほとんどスルーしちゃってたんですよね。どうしても聴きたいって思わないものが多くって。
たぶん僕はヴィヴィアンのスターらしい華やかさとか洗練とかも含めて大好きだったんですよ。
冒頭歌いだしの華やかなポップさに、あぁこれこれってね。
もちろんこの1曲目からタマとサバールの乱れ打ちが乱舞して、もう全開ですよ。
もろ手を挙げて喝采を叫ぶしかありません。

最近はアフリカ音楽はアンゴラやナイジャ・ポップはじめ若い世代による新しい波が押し寄せていて、僕なんて全然追いつけてません。セネガルにも若い世代のポップがあるのかないのか良く知りませんが、ベテランも負けてらんないってことでしょうか、この新作はもう有無を言わさない素晴らしい出来に仕上がってますよ。

傑作「WUY YAAYOOY」と比べて特別新しいことをやってるとも思えない。っていうかほとんど変わらない。ってことはオールド・スクールなンバラってことになるのか。ニュー・スクールなンバラがあるのかよくわからないけど。
2曲目や9曲目なんかは打ち込みも交えて新手のンバラ・ポップなのかもしれないけど、それにしてもパワーもしなやかさも10年前のまま、微塵も減じず据え置きってことに驚いてしまう。
MVもある「Deranger」なんて、ほんとスカッと爽快なンバラで後半の太鼓乱れ打ちには興奮せずにいられません。もうこれこれ。これを待ってたんだよ!こうなると新しいとか古いとか関係ないよな。

テンション上がりぱなっしのまま突っ切る全11曲41分。
ンバラ・クイーンは堂々健在を示す傑作です。

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南アフリカン・ポップス事始めと言えば [アフリカ]

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昨年末にようやくゲットしたダーク・シティ・シスターズのCD。ようやっとですよ。うれしいなぁ。93年リリースですけど、僕が興味を持った時にはとっくに廃盤で、プレ値がついちゃってたんですが、ようやく普通の中古値で見つけました。
ストリーミング時代になっても未だ、おざなりなベスト盤くらいしか見当たらないので、これが欲しかったんですよ。まぁこれもかなり難アリな盤みたいですけど。

ダーク・シティ・シスターズといえば「スタータイム」という4枚のアルバムですけど、もういつになったらCD化されるのやらと待ちくたびれてたら、もうストリーミング時代になっちゃいましたが、いまだに聴けない。そのうちひょっこり聴けるようになったりするんでしょうかね。

それまでこのCDで我慢しようか。もしかしたらYoutubeに上がってるものでかなりの部分聴けるのかもしれないけど。
とにかく南アフリカン・ポップス事始めと言やぁこのダーク・シティ・シスターズでしょ。ってよくしらないくせに言い切っちゃいますけどね。
おおらかなグルーヴに寒さも吹き飛びますよ。
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絶頂期はもうすぐそこ! [アフリカ]

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10年くらい前にまとめて入手したフランコのCDがあったけど、またひさしぶりに入手してとりあえずこのFranco & Vicky Et L'OK Jazz名義の「1963 1965 1966」を聴いてみた。
いやぁこれはもう素晴らしいっすね。フランコはいつも良いけど、この時期は絶頂期へまっしぐらな感じで、ルンバ・コンゴレーズを確立するところ、フランコ・サウンドを完成させていくその瞬間を一曲一曲聴かせるようでスリリングです。

いきなりボレロで始まりますが、これがまた濃厚で良し。キューバ音楽とはまた違うドロッとした熱気をはらんでいるところが独特です。
もちろんアップ・ナンバーはそれにも増して良し。このアルバムを聴いて何より耳に残るのはサックス。そうですこの時期はヴェルキスがいた時代なんですね。
なんだから悪いわけない。まぁフランコが悪い時期なんてないですけどね。
このアルバムが良すぎてなかなか次へ進めないなぁ。

フランコのアルバムはこういう愛想なく年代が記されたものが多いですけど、アルバムという概念をもって録音してなかったんでしょうね。シングルとして録音したものを後年まとめたものなのかな。

そういえばフランコってストリーミングでも探すときに名義がいろいろあって探しにくいんですよね。
とまれ今年後半はフランコをじっくり聴き返すことになりそうです。
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研究発表に堕しないアフロビート・ジャズ [アフリカ]

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もう朝から台風で雨がすごい。
これから風も増してもっとひどくなるらしいけど、大丈夫だろうか。


そうれはそうとここ数日、クティマンゴーズの新作「Afrotropism」のばっかり聴いてる。延々リピート再生してます。止まらない。
デンマークのアフロビート・ジャズ・バンド。もうこれで3枚目というのに全く知りませんでした。前2作も聴いて、もちろんそれも良かったけど、前2作をはるかに凌駕するこのアルバムの完成度は一皮むけたバンドの姿を映し出しています。
何度も聴いるうちに、これこそ僕が求めていたアフロビート・ジャズだったのかもしれないなと確信しましたよ。

この夏はマイケル・ヴィールをけっこう愛聴してました。
まぁ彼はフェラ・クティ研究家だから、音楽が本職じゃない人の研究発表というか、そういうものとして読書のBGMとかにはよかったんですよ。イージーリスニング・アフロビートとして重宝したんです。
でもクティマンゴーズのようなこんなアフロビート・ジャズを聴くと、マイケル・ヴィールは遠く彼方に木っ端微塵に吹き飛んじゃいますな。まぁ仕方ない。

一曲目からめくるめくポリリズムに心、いや身体ごと奪われる。プログラミングも交えたイントロの「Stretch Towards the Sun 」はちょっとピーター・ガブリエルとか思い出したりもするが、そんな印象もホーン陣がテーマ・リフレインを奏でだすと雲散霧消する。

グナーワのリズムをグルーヴに忍び込ませた「A Snake Is Just a String」、ジャイブ・ミュージックのようなホーン・アンサンブルが祝祭感を醸す「Call of the Bulbul Bird」。
晴朗なホーン・ラインに北欧の光を見る「Keep You Safe」。この曲に限らずテーマ・メロディには北欧ジャズのエッセンスが垣間聴こえてくる。
「Thorns to Fruit」にはエチオ・ジャズのエッセンスも。最もストレートなアフロビートの「Money Is the Curse」でさえ定石を良しとしないゆえのフレシキブルさが聴こえてくる。
本家フェラやシェウンではありえないような「Sand to Soil」はなんとも爽やか?なアフロビートだ。ジャケに移る一本の木に北欧の風が吹き下ろし、青空の下、雄大なグルーヴが地面を震わせる様。

さっきピーター・ガブリエルとか思い出すと言ったけど、曲構成が凝ったものになればもっとプログレ臭は増したろうけど、あくまでもアフロビート、そのアフロビートを元手に新たな音楽を創造しようとする意志が隅々にまで行き渡り、その聴後感はそうそうないくらいに爽快。何より研究発表にならない音楽家としての矜持に胸熱くなります。

全7曲40分という短さなのに長編映画を見たような充足感に、ほんとリピートが止まらない。これしか聴いてないので、ブログ更新にも支障をきたしてます。


ちなみに木っ端微塵に吹きとんだマイケル・ヴィールは、その後拾い集めて、また聴いてます。だってクティマンゴーズだと音楽に耳がいきすぎて読書のBGMになんないんだもの。
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