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ショロンな粋 [ブラジル]

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これは素敵なアルバムだ。いや粋といったほうがいいか。
ブラジルのフルート/サックス奏者、ヴァルテール・ピニエイロの「2 POR 3」。
バークリーを卒業して北米での活動歴もあるみたいですが、根っこにあるのはショーロのようです。

一曲目から頬が緩みっぱなしになるジャズ・ショーロですもん。
そしてガフィエイラ・ド・ピニエイロなんていうグループでも活動しているらしく、続いて賑々しく奏されるのはそうですガフィエイラ!その次はジャズ・サンバ!と、ブラジルの多彩なリズムが複数人の管楽器もいる中編成のバンドでたっぷり味わえます。

そんな音楽なので参加メンバーそれぞれのソロも、ほんの2コーラス程を軽やかにあっさりと。アンサンブル重視でリラックスしながらも適度な緊張感もある。
曲によって微妙に編成を変えてアコーディオンが入ったり、ベースの代わりにチューバを起用した「Still Fying」はニューオーリンズ・セカンドラインとサンバが合体したようにも聴こえてくるし、続く「Fly #3」はより一層アフロ・ファンク度高め。
このアルバム・タイトルはサックス、トランペット、トロンボーンがそれぞれ二人ずついることに由来するのかな。

サマーブリージンなフュージョン・バラードまであったりして、そのどれもがショロンな粋に溢れていて、心地良いことこの上なし.腹八分目な感じがたまらなく良いなぁ。最後はこれはマルシャかな。快活に締めくくってくれますよ。

ブラジルらしさに満ちた逸品です。
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海の男の歌 [ブラジル]

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古いサンバが好きになってからもうずいぶん経ちますが、ドリヴァル・カイミってほとんど聴いたことなかった。ちらっとは聴いたんだけど、あまりピンとこず、そのままに。
ライスから田中勝則さんがコンパイルしたCDが出たのでそれで入門しようと思っていたけど、それもそのままに。

「音楽航海日誌」のカイミの記事に載っていた85年の企画ものアルバムが96年にCD化された「INEDITO」を昨年末に入手しました。これメジャーのユニバーサルから出てるのにストリーミングにはないんですけど、一曲だけYoutubeで聴けて、それにばっちり魅せられました。

このアルバム、2枚組で、1枚目はギター弾き語り、2枚目はバックが付いていて、カエターノ・ヴェローゾやトム・ジョビンのコメントも入っています。
最初はちゃんとしたバックが付いているものが良かったんだけど、何度か聴いてるうちにギター弾き語りの方により強く惹かれるようになりました。曲ごとにサンバ・カンソーンとかカンソーン・プライエイラとか書いてあって、カンソーン・プライエイラとは海を題材にした歌の事なんですね。
イエマンジャとかアフリカの神様の名前が出てきたりして、バイーアに根付くアフロ・ブラジル文化というものに思い至ります。

いまだに僕には複雑なハーモニーや豊かなリズムが結びつくブラジル音楽は謎が多すぎて、やっと取り付く場所を見つけくらいなんですが、この2枚組が耳についたら、若き日のカイーミの歌も聴いてみようと思います。

残念なのはこのジャケ。ユニバーサルなんだからもう少しなんとかならなかったものか。このジャケで三割くらい損してる気がする。

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マンゲイラへの愛と敬意 [ブラジル]

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マリア・ベターニア。
名前は知ってる。確かカエターノ・ヴェローゾの妹だとか。
でもMPBはあまり聴いてないから、彼女も聴いたことはない。
もう70代半場かな。

最近リリースされたこの「MANGUEIRA - A MENINA DOS MEUS OLHOS」は、マンゲイラがベターニアへのオマージュを捧げたサンバ・エンレードで2016年にカーニバルで優勝したことへの、アンサー・アルバム。

レチエレス・レイチによる閃きを感じさせるオーケストレーションは、知的な躍動感?に満ちていて、耳をそばだてさせる。
そこにのるベターニアの落ち着いた歌声は、キャリアをものがたるさすがの貫禄ですね。

現在のマンゲイラの顔、タンチーニョが一曲丸ごとコクのある歌声を聴かせた後、カエターノ・ヴェローゾが息子のモレーノと連れ立って、相変わらずヘロヘロっとした声で歌うのが可笑しい。

作曲者にはネルソン・サルジェントやパウリーニョ・ダ・ヴィオラの名前もあるから、おそらくマンゲイラ所縁の曲ばかりなんだろう。
最後は自身に捧げられた2016年のサンバ・エンレードを軽く口ずさむ。
30分に満たないアルバムだけれど、愛と敬意に満ちたサンバにほっこりします。
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ショーロの気安さとジャズの緊張感と [ブラジル]

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いやぁこのスピード感。エキサイティングだなぁ。
先日新作を聴いたばかりのアミルトン・ジ・オランダの2009年作「Brasilianos 2」。さっそく購入。スポティファイで聴けるんだけどね。

たしかに新作はこのころと比べると落ち着いた風情が漂ってましたね。
でもあの落ち着いた渋さは、これからの秋口に合いそうで嫌いじゃないんですけど。

ドラム、ベース、ギターにハーモニカとバンドリンという布陣。ギターがアコースティックってとこやテーマ・メロディの爽やかさとかにショーロの根っこを感じますよ。ドラムもベースも歌もののバックの演奏のようにフロントを盛り立てる。

新作と大きく違うのはハーモニカがメロディ楽器として軽やかな彩を添えているところ。
3曲目のガブリエル・グロッシのハーモニカとのユニゾンなんてすごすぎて笑っちゃう。でもバカテク披露会みたいにならずに、ショーロの気安さがジャズの緊張感を和らげて楽しくスウィングするところがミソ。

きらめくようなバンドリンのソロにくらくらしてると、後半には静かに歌心感じさせるプレイでほろっとさせる。
僕のアミルトンの愛聴盤はなんといってもダンスダンスダンスな「Bailo Do Almeidinha」ですけど、こちらもそれに続いてフェイバリットになるでしょう。

そういえばアミルトンってクリス・シーリーと印象が重なるんですよね。ジャンル横断してなんでもやっちゃうとことか。日本でもパンチ・ブラザーズは結構高く評価されてるみたいなので、この人もジャズ・ファンはじめもっと聴かれていいなのになぁ。
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62年のブラジル歌謡の王道 [ブラジル]

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タワレコでオーダーしたエルザ・ラランジェイラの「A Noite Do Meu Bem 」が、リリース後たった3か月で廃盤で入手できず、がっくりしたわけなんですが。
そんなこともあって同じくジスコベルタスから再発された62年作「Ternura」は、とっとと入手しましたよ。

全体的に時代が下ってボッサ風味が強くなってますね。オルガンがピョーンっと鳴ったり、コンボ編成のバッキングにムード歌謡なコーラスが入ったりする曲もあったりして、そのどれもが歌謡曲。時代に即して変わっていくのは当然でしょう。たぶん62年のブラジル歌謡の王道はこんなところだったんじゃないでしょうか。

ボッサ風味もまぁ良いんですが、やっぱりストリングス入りのサンバ・カンソンな曲にうっとりしてしまうわけで。
好みとしてはやっぱり「A Noite Do Meu Bem 」が好きですけど、こちらも良く聴いてます。
ジャケがまた洒落てますよね。

ところでと本作でエルザは有名なジョビンの「Água de Beber」、邦題でいうところの「おいしい水」を歌ってるんですね。これってジョビンは63年に録音してるみたいなんですが、とするとこの曲を最初に歌ったのは彼女ってことなんでしょうかね。
そもそも僕はこの曲を誰のヴァージョンで聴いて知ってたのか定かでないんですけど。
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ジェラルド・ペレイラを歌う [ブラジル]

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久しぶりだな。CDをPCに入れたら曲目も何も表示されないのって。
ヴェーリャ・グァルダ・ダ・マンゲイラ のグループとしては何枚目なのかな何しろカルトーラも在籍していた名門エスコーラだからな。

このアルバム、いまどきストリーミングもダウンロードさえも見つからない自主製作盤で、こういうサンバってブラジルの人たちにとってはわざわざCD買って聴くもんじゃないんだろうな。近所を歩けば聴こえてくるもんなんだろうから。

アルバム・タイトル「ジェラルド・ペレイラを歌う」というタイトル通りの伝統の担い手達が先達の曲を歌うっていう作品。でも僕はジェラルド・ペレイラをよく聴いたことないんだけどなぁ。と聴き始めると、一曲目から聴いたことある。どこで耳にしてるんだろう。もう少し勉強しないとな。メインで歌うはタンチーニョです。良い声してるよねこの人。そしてゲストにはネルソン・サルジェントやアルシオーネなどなど。

悪いわけない。
別に改めて説明の必要のないサンバです。素晴らしいです。朗らかで明朗な光に満ちていて。「まぁ人生いろいろあるけどさ。大丈夫大丈夫」と肩を叩かれてるような気になる。
毎度ちょっと泣けてくる。

古紙で作られているというデジパック型のCD。けっこう分厚い写真満載のブックレットもうれしい。みんないい顔してるよな。
ジャケの裏にはやたらとたくさんの企業ロゴ。多分いろんな会社の寄付とかで製作されてるんだろうな。そんなことがタンチーニョのソロ作に書いてあったな。もしかしたら本作もそんな風に企業の文化事業の一環として作られたのかもしれない。こんなCDをそんな風に作るなんて、良い国だなブラジルってさ。

サンバを愛する人は必携の一枚ですよ。
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バイーアのメロディ [ブラジル]

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ロベルタ・サーの新作「Giro」がリリースされました。
特別興味を持ってなかったの人なのに、先行公開されていたジルベルト・ジルとジョルジ・ベンジョールとのコラボ曲に強く惹きつけられていたので楽しみにしてたんですよ。明朗な響きを持った軽やかなメロディにほだされたんでしょうかね。

ちなみに僕は評価の高い初期アルバムはちらっとしか聴いたことなくて、モノクロジャケの前作をストリーミングで聴いただけです。前作はちょっとダウナーな感じで悪い印象はなかったけど、一回しか聴かなかったな。

サンバをベースにしているとはいえ、やっぱりこれはMPBの方に分類されるんだろう。
本作は彼女がジャーナリストのホルヘ・バストス・モレノとの会話からバイーア出身の作家の曲を歌うというコンセプトを思い付き、ジルベルト・ジルと結びついていったことから生まれたアルバムのようです。ジルってバイーア出身なんですね。そもそもバイーアがブラジルのどこにあるのか良く知らないわけで・・・
ジル単独が3曲、そのほかはジルがサーや息子と共作して完成させた曲。

とにかく収められた曲がどの曲も良い。聴き終わったそばからまた聴きたくなる。あとをひく。飽きが来ないメロディ。本作を気に入ったのはそのバイーアもしくはジル特有のメロディ?に惹かれてるのか。弦楽器主体のアコースティックなアレンジも良いし、ジルベルト・ジルの息子がプロデュースしてるとかで、この人がキー・パーソンかな。
何が自分の心を耳をとらえて離さないのか、それを確かめようとするように何度も繰り返し聴いてます。

ポリリズミックなグルーヴと複雑なハーモニー感覚というのが、僕にとってのブラジル音楽の大きな魅力のひとつなんだけど、そういう意味でブラジル音楽の魅力にあふれた逸品だと思います。
ジルとベンジョールとの共演曲のMVを見れば見た目は中年っぽくおばさん化してきたサーの歌も、前作のもの憂い表情が払拭され、軽やかに響き、清々しく五月晴れの空に溶けていく。やはり歌手としてとっても魅力的な人なんですね。

エンディングのフリューゲルホーンも良い感じ。

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バイーアに生まれて [ブラジル]

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あぁもう参っちゃうぜー。
またこんな素晴らしいサンバが聴けるなんてな。
後半に置かれた「Mariá 」を聴いてたらもうなんだか涙が込み上げてきちゃった。

ショップの説明によれば、リアショーン、バタチーニャ、パネーラというバイーア・サンバのレジェンドによる73年の「SAMBA DA BAHIA」へのトリビュート作だという。リアショーンしか知らないけど。もちろんそっちは聴いたことない。

こっちはタイトルが逆で「Bahia Dá Samba」。
本作の3人もはじめて聴く名前、ジャケ左からギガ・ヂ・オグン、セウ・レジ・デ・イタプア、ヴァルミール・リマ。だいたいこのジャケ見ただけで最高に違いないと思ったよ。こんないい顔したじいさん3人が並んでんだから間違いないとサンバ好きなら思うでしょ。事実その通りに最高なんだから。

トリビュート作といっても73年盤の曲をやってるわけじゃないみたいで、3人それぞれの自作を持ち寄って、現在進行形のバイーアのサンバを歌おうってこと。ここでもまたバトンが手渡されてるってわけ。
バイーアに生まれて、この地のサンバに育まれた自分達だからこそ歌えるサンバ。その誇りと愛。
いやぁ素晴らしいね。三人三様のサンバの味わい深さよ。

感動するのはおそらく十年一日のごとく変わらないサンバだろうに、ポップでコンテポンラリーな空気を纏っていること。要は今もこんなサンバが毎日の生活の中でリアリティを持って鳴り響く場があるってことなんだろう。

まだ一回ストリーミングで聴いただけだけどあまりに素晴らしすぎて、これはぜーったいCDで買うからってことでさっそく大枠で記事にしちゃったよ。
昨年モナルコで泣いた人は今年はこれで泣くこと間違いなし。



ちなみに今この記事を書きながらYoutubeにあった73年盤「SAMBA DA BAHIA」を聴いてます。こっちも最高だなぁ。
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都市の叙情を湛えたサンバ [ブラジル]

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プロデュース業なども手掛けるという才人、ロドリゴ・カンポスの「9 SAMBAS」。
昨年からストリーミングで聴いてたんですけど、じわじわと気に入ってこれは絶対CD買おうと思って、届いたら記事にしようと思ってたんですが、結局正月もとうに過ぎて、ようやく届きました。

先日のパウリーニョ・ダ・ヴィオラの記事の前半の文章は本作を紹介するための枕として記してあったものでした。結局あっちの方を先に入手したわけです。
本作がパウリーニョのサンバの延長線上にあると思ってたんですが、何度も聴いてるうちにちょっと違うかなとも思い始めた。もちろん通じる部分はあるけど、パウリーニョのルーツ学究的なスタンスはロドリゴにはあまり感じられず、もっと今の時代を映したサンバを歌おうという意思を感じます。
ジャケからして現代美術的なセンス。CDだと紙ジャケで黄色いのは帯になっててとりはずせます。

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1曲目のゲストのロムロ・フローエスも以前の僕にはちょっと敷居が高かった。
フローエスがゲスト参加するだけあってどの曲もアレンジにひねりが聴いてる。クラシックともジャズともいえないホーン・アレンジが施されていたり、時にノイジーなギターも聴こえる。
でもそれもすべて現代の都市や社会を映しているようにも思えてくる。ひねったというよりは目の前に見える風景を音にしたような。フィクションでなくてドキュメンタリー・タッチ。サンバが映す都市のサウンドスケープ。

ギターやカバキーニョはじめ打楽器まで、聴こえてくる音の8割がたは自身で演奏しながらも、フローエス作品に比べれば前衛的というより、瀟洒に愛らしくさえ聴こえるその音楽は丸みを帯び耳にやさしい。
全9曲、都市の叙情を湛え、磨き上げられた工芸品のような佇まいの曲自体も魅力的で、柔らかく芯に温もりをもったロドリゴの歌声は静かに語り掛けるように響いてくる。

うん冬の長い夜にはこんなサンバが良く似合う。

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先達への憧憬と敬意を礎として [ブラジル]

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サンバをよく聴くようになっとはいえ、僕が聴くのはオルランド・シルヴァやマイーザなど古い歌謡サンバとモナルコなどのエスコーラ系だけで、サンバのほんの一部なんですね。

昨年ストリーミングでパウリーニョ・ダ・ヴィオラを聴いて良いなとは思ったんだけど、エスコーラ系の人生のなんたるかが滲み出るような味わいに魅せられた者としては、なんかちょっとひ弱というか、学校で勉強してきたみたいな感じが、今一つのめり込むほどにはならなかった。

でも最近エスコーラ系のサンバばかり聴いてので、ああいう白人サンバもあれはあれで悪くないなと。思いなおしまして。
パウリーニョ・ダ・ヴィオラはサンバの中興の祖と言われてるようでで、なるほどこういう人によってカルトーラはじめとする無名のエスコーラ系のサンバに光が当たり、再評価されマルクス・ペレイラ盤が録音されたり、70年代サンバを盛り上げたんだなと言うのもようやく理解しました。

サンバの偉人への憧憬と敬意を表しながら歌うサンバ。
その生真面目さがちょっと詰まんなく感じる瞬間も無きにしも非ずだけれど、それも伝統を歌い継いでいく使命感みたいなものの現われなんだろうと。

ストリーミングではパウリーニョの初期のオデオン盤は少ししか聴けなくて、Youtubeで耳にして気に入ったのが80年のオデオン最終作「Zumbido」です。
タイトルのズンビードと言うのはアフロ・ルーツ・サンバのルーツとなったリズムのことらしいんですが、本作もそうやっていかにも学究的にサンバを追求したアルバムではある。

でもここで聴こえてくる、先達への敬意を礎として、少しずつサンバのなんたるかを手繰り寄せ、リンクをたどり、頭でっかちになる直前に、自身の音楽として放ってみせたサンバは、明るい光の中で戯れ、和やかに聴き手の身体を揺らす。

なーんてパウリーニョの他のアルバムをろくに聴いたこともないのに、知った風なこと言ってますが。
ただデビューから学究的に追求してきたことが、ここにきてようやく先達の真似でなくて自身のサンバとして歌えるようになったんじゃないかなと。

エルトン・メディロスら先輩との共作も交えたオリジナルを中心に、いくつかあるカバーはエスコーラ系サンバの名曲かな。
あくまでも優等生的な佇まいだけれども、先達への憧憬と敬意を礎として歌われるサンバは明朗な光を帯びてなんとも清々しいのです。
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