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R&Bのネクスト・レベル [R&B/JAZZ/etc]

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グラミー賞に加えアカデミー賞まで受賞して、いまやR&Bの中心にいるといっても過言でないH.E.R.の新作「Back of My Mind」がリリースされました。
これは一応彼女のデビュー・アルバムということらしいです。これまでリリースした3つの作品、最初の2つは併せてCDでも出ましたが、それらはコンピレーションという扱いだそうで。

タイ・ダラー・サイン、クリス・ブラウン、ブライソン・ティラーなどの参加もあるが、思ったよりも客演は少ないですね。深く響くベース音は確かにトラップの時代を映しているけれども、殊更に新しい意匠は感じられない。

サンダーキャットがベースを弾く「Bloody Waters」はマーヴィン・ゲイの「Inner City Blues」へのオマージュだろうか。そう思うと歌詞が気になってくる。「Hold On」からはディアンジェロの「Untitled (How Does It Feel)」が聴こえてくる。

ニュー・ソウルからそのエッセンスだけを抽出し、90年代R&Bのグルーヴが遠く木霊するR&Bのネクスト・レベル。すでに2020年代のスタンダードの趣さえも感じられます。
昨年からリリースして来たシングルも収録されてますが、グラミー受賞曲「I Can't Breathe」は収録されてませんね。BLM的な色が濃くなるのを避けたんでしょうか。

21曲入り80分近い2020年代らしからぬ大作ですが、最後まで耳を澄ますように聴いてしまうのは、淡々としていながらも深い憂いを諦観へと紛らせない歌声のおかげ。彼女の名前H.E.R.=Having Everything Revealedのとおり全てを明らかにするためには憂いに沈んでいるわけにはいかないのでしょう。
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