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変わってしまった朴訥な僕のアメリカへ [R&B/JAZZ/etc]

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最近強烈なアルバムが多くて、せっかく買ったのに影が薄くなってたパット・メセニー「From This Place」。
そう買ったんですよ。パット・メセニーのアルバム買うのなんて2005年の「The Way Up」以来だな。もう手元にないけど。
パットはいつもクオリティの高い仕事をしますから、近作もスポティファイとかでちらっと聴いて、なかなか良いな。そのうちじっくり聴こうって感じで、結局聴かないままなんですけど、本作はちゃんと聴いて、なにかくるものがあったので買いました。

この人はミズーリ州出身で、牧歌的なメロディの曲はどこまでも続くプレーリーを想像させて、田舎育ちの朴訥なところがこの人の音楽のいいところだと思ってるんですけどね。
だからパットの名声を高めたテレビの世界自然大紀行のサントラみたいな、80年代の作品にはあまり惹かれないんですね。

今回は新しいバンドなのかな。
重要なのはオーケストラが大きく入っていること、このオーケストレーションを担当したのが、ギル・ゴールドスタインとアラン・ブロードベント。ギルはギル・エヴァンスの弟子ですよね。今ならマリア・シュナイダーの兄弟子といった方が通りがいいか。この二人のオーケストレーションが素晴らしい。もちろん演奏も素晴らしいんですけどね。

列車の走るSEもはいったドラマチックな冒頭の「America Undefined 」。どこか沈鬱というかシリアスな雰囲気漂う曲が続くが、ミシェル・ンデゲオチェロの歌声も美しいアルバムのタイトル曲「From This Place」を聴けばその理由ははっきりする。
本作は現在のアメリカ、トランプのアメリカに対する異議申し立てなのだ。
田舎育ちのパットにしてみれば、変わってしまった朴訥な僕のアメリカへの沈鬱なメッセージなのだろう。

とはいえ、先日のモーゼス・ボイドに比べれば圧倒的に耳障りの良い音楽なので、流し聴きもできるで重宝してしまう。これ聴いてて正直なところパットのギターがどうとか全然考えない。しっかりと構成されたクラシックを聴くのと同じような感じ。77分もあるのも映画を見てるような気分で楽しめる。
最後のロマンティックな「Love May Take Awhile」はエンディングロールのよう。技術のある人達がその技術を存分に発揮した傑作です。
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