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先達への憧憬と敬意を礎として [ブラジル]

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サンバをよく聴くようになっとはいえ、僕が聴くのはオルランド・シルヴァやマイーザなど古い歌謡サンバとモナルコなどのエスコーラ系だけで、サンバのほんの一部なんですね。

昨年ストリーミングでパウリーニョ・ダ・ヴィオラを聴いて良いなとは思ったんだけど、エスコーラ系の人生のなんたるかが滲み出るような味わいに魅せられた者としては、なんかちょっとひ弱というか、学校で勉強してきたみたいな感じが、今一つのめり込むほどにはならなかった。

でも最近エスコーラ系のサンバばかり聴いてので、ああいう白人サンバもあれはあれで悪くないなと。思いなおしまして。
パウリーニョ・ダ・ヴィオラはサンバの中興の祖と言われてるようでで、なるほどこういう人によってカルトーラはじめとする無名のエスコーラ系のサンバに光が当たり、再評価されマルクス・ペレイラ盤が録音されたり、70年代サンバを盛り上げたんだなと言うのもようやく理解しました。

サンバの偉人への憧憬と敬意を表しながら歌うサンバ。
その生真面目さがちょっと詰まんなく感じる瞬間も無きにしも非ずだけれど、それも伝統を歌い継いでいく使命感みたいなものの現われなんだろうと。

ストリーミングではパウリーニョの初期のオデオン盤は少ししか聴けなくて、Youtubeで耳にして気に入ったのが80年のオデオン最終作「Zumbido」です。
タイトルのズンビードと言うのはアフロ・ルーツ・サンバのルーツとなったリズムのことらしいんですが、本作もそうやっていかにも学究的にサンバを追求したアルバムではある。

でもここで聴こえてくる、先達への敬意を礎として、少しずつサンバのなんたるかを手繰り寄せ、リンクをたどり、頭でっかちになる直前に、自身の音楽として放ってみせたサンバは、明るい光の中で戯れ、和やかに聴き手の身体を揺らす。

なーんてパウリーニョの他のアルバムをろくに聴いたこともないのに、知った風なこと言ってますが。
ただデビューから学究的に追求してきたことが、ここにきてようやく先達の真似でなくて自身のサンバとして歌えるようになったんじゃないかなと。

エルトン・メディロスら先輩との共作も交えたオリジナルを中心に、いくつかあるカバーはエスコーラ系サンバの名曲かな。
あくまでも優等生的な佇まいだけれども、先達への憧憬と敬意を礎として歌われるサンバは明朗な光を帯びてなんとも清々しいのです。
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