子供にはわからないアーバン・メロウの極致

年を経るごとに僕はフュージョンという音楽が好きになる。
最近仕入れたのはボブ・ジェイムスとデヴィッド・サンボーンの86年の共演作「ダブル・ビジョン」。
プロデュースはトミー・リピューマ。メンツは主役の二人にマーカス・ミラー、スティーヴ・ガッド、ポール・ジャクソン。スタンダードの「Since I Fell For You」を歌うのはアル・ジャロウ。

一曲目のマーカス・ミラー作「Maputo」からして大人だわ。誰もこれみよがしな事はせず、やるべきことを淡々とやって一つの音楽を紡いでゆく。マーカスのときおり顔を出すスラップがカッコイイ。
どの曲も曲の良さを活かすためのアレンジや演奏に最大限の注意が向けられている。「Since I Fell For You」もこういう高度に洗練されたアレンジで聴くのも悪くないなぁ。改めていい曲だと思う。
もちろんボブ・ジェイムスは全体をきっちりとしきり、ピアノソロも全部譜面に書いてんじゃないかって感じのプレイぶり。サンボーンのアルトは艶っぽくよく歌う。美味しいところをちゃんと美味しく聴かせてくれる。

曲はいいし、演奏はミュージシャン・シップにあふれた職人芸。
部屋の中にきちんとある一定のムードを作り上げてくれる。
子供にはわからないアダルト・アーバン・メロウの極致。
文句をつけるところがどこにも見当たらない。