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忘れられた巨人 [本]

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アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士……さまざまな人々に出会いながら、雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとは――。

カズオ・イシグロの13年ぶりの新作「忘れられた巨人」。
前作「わたしを離さないで」は映画で見た後、小説の方もパラパラっと。奇抜な設定に入り込むことができず映画も今ひとつだった。
でもGWはとりたててどこに行くという予定もなかったので、家内エンターテイメントをと思い楽しめそうな予感を胸に発売日に購入。

主人公がいつとも知れぬ時代(一応アーサー王の時代ではあるけど)を旅するとうい設定もありなんとなく「指輪物語」とか思い出しました。こういうの結構好きです。寓意を含んだ物語なので読む人によって色々な解釈があるだろうけど、独特の世界感も含め村上春樹に通じる現代のよくできたエンターテイメントでもあると思いました。
でも原題「The Buried Giant」を「忘れられた巨人」と訳すのは意訳しすぎじゃなかな。間違ってはいないけれども、読者が想像する余地を奪ってしまう。ちょっと残念。

記憶についての物語であり、忘却によっても失われない怒りや復讐の物語であり、永遠の愛についての物語でもある。文章も平易で読みやすく楽しめましたね。イマジネイティブな装画もよし。おすすめします。

でも、わたしたち船頭は長年にわたってたくさんの人を見てきています。偽りを見破るのに、さほどかかりません。それに、一番大切に思っている記憶を話すとき、人は本心を隠すことなど不可能です。愛によって結ばれているという二人の中に、わたしたち船頭は愛でなく恨みや怒り、ときには憎しみすら見ることがあります。あるいは、大いなる不毛とかね。ときには孤独への恐怖だけがあって、それ以外には何もなかったりします。年月を越える不変の愛など、めったに見られるものではありません。

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