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スタンダードな味わいのベトナム歌謡 [アジア/インド]

LE QUYEN.jpg

ベトナムの歌手レー・クエンのCDを購入。
ここ数年来、評価が高かったのは知ってましたが、ずっと敬遠してました。
単純に僕の好みの歌手ではなかったから。このハスキーなアルト・ヴォイスが重く感じられたんですね。情深すぎる歌というか。一点に向けてグゥーっと感情を圧縮していくような。
でも最近は演歌を聴いてることもあってそういう歌もだいぶイケルような気分なので、今なら楽しめるかなと思って。

大正解でした。
好みの歌手ではないのは確かなんですけど、バックの流れるようなオーケストレーションも麗しく、レー・クエンの丁寧に聴き手の心のひだに情感を染み渡らせていく歌も、たっぷりとした潤いがあって旨い。基本歌の遊びの部分が少ない生真面目な歌い手さんだと思いますけど、本作を聴く限りは、感情いっぱいいっぱいにならずに余裕が感じられるので思った以上にすんなり身を任せられる。

本作は戦前の南ヴェトナム時代に活躍したヴー・タイン・アンという作曲家の曲を歌った作品集らしいんですが、ヴー・タイン・アンという人はアメリカの当時のヒットポップスとかもよく聴いていたんでしょうか。とてもモダンな感覚のある曲ばかりで、ベトナムの民族楽器などが一切はいらない伴奏のせいもあってスタンダードな味わいのある歌謡作品に仕上がってると思います。バックにオーケストラを配しているといっても、アレンジは時にエレクトロニクスを使用したり、ジャズ・スタンダード風に決めたり、曲に合わせてのきめ細やかな演出が嬉しい。

ベトナム歌謡をよく知らないですけど、曲自体がベトナム的情緒希薄≒湿度低めで、普段ベトナム~アジア歌謡などほとんど聴かない人でもなじみやすいと思う。昨日エル・スールでピックアップしてきたばかりなのに今日一日で何回聴いたかな。今年はいい作品ばかりに出会えて年末のベスト選は激戦必至。とりあえず本作もベスト10入りはほぼ確実。

箔押しのジャケにムードたっぷりな写真のブックレット。持ってて嬉しいCD。とりたてて美人じゃないと思いますけど、フォトジェニックな人ですね。
Lệ Quyên 01.JPG

聴いてるうちにだんだん苦手だと思っていたこのアルト・ヴォイスもあまり重いと感じなくなってきた。彼女の歌に初めて接するにはジャストなタイミングだったかもしれない。
これ一枚で彼女の作品は十分と思っていたけど、聴くほどに馴染んでくることもあって、他の作品も聴きたくなってきた。
こういうコンセプトのしっかりしたつくりの演歌作品にも出会えたらいいんだけどなぁ。

コロコロと転がる粒立ちも鮮やかなピアノ、ムーディなテナー・サックスのソロ、ジャジーな演奏と共に細やかに織り込まれていく情感のタペストリー。美しい。

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