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アンダルシアとカリブを結ぶ秘密の航路 [ラテン]

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アンダルシアの家の庭先で僕がつま弾くのは骨董市で手に入れたトレス・フラメンコ。さぁこの楽器を手に船出しよう。 行く先は古本屋の隅で埃をかぶっていたこの本を開けばわかるさ。 遥かカリブの島々への長い旅路。誰も辿ったことのない秘密の航路。

スペインの音楽家ラウール・ロドリゲスの「Razon De Son」は、トレス・フラメンコを片手に時間と空間を自在に巡る音楽の旅だ。
一曲ごとに詳細な解説が記された本は写真もデザインも素晴らしく、普段凝ったパッケージを好まない僕もこれには脱帽。CDというよりCD付きの本だな。スペイン語だから内容がわからないのは残念だなぁ邦盤買えばよかったかなと思ったら巻末に英訳もちゃんと付いてた。その解説を読みながら聴いていると本がダメージ加工してあるデザインなこともあって古い文献を頼りに旅するような気分になって思わず上のような文章を綴ってしまった。

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旅先で歴史の中に埋もれていた歌を掘りおこしてきたような佇まいの曲は1曲を除き全てラウールによるオリジナル。一種の研究発表みたいな音楽のはずなのに堅苦しくないのは、共に演奏する仲間達に音楽を委ね一人よがりにならないおおらかさと、音楽自体が外へ開かれているからに違いない。最初に僕が思い出したのはライ・クーダー。ライナーを読むとラウール自身もライには親近感をもっているようで、ライに捧げられた曲もある。

アルバム全編に鳴り響くトレス・フラメンコの音色そのものが、かつてあったもしくはあったかもしれない物語を紡いでいく。その物語に登場するのはサハラをわたってきた遊牧民たちやアラブ商人、ロマの旅芸人一座、カリブからサトウキビを載せた商船。様々な肌や目の色の違う人たち(スペイン語の歌詞は分からないので、あくまでも音からのイメージです)。
鍵盤楽器を排した弦楽器と打楽器だけによる演奏はアフリカやアラブそしてカリブなど、ときにエキゾチックな薫りをほのかに漂わせながら遥かなる土地を目指して進んでいく。最後のインスト曲が終わったあとに聴こえる鳥の啼き声は、長い旅路を終え帰り着いた自宅の庭先で聴こえるものか、それともようやくたどり着いたカリブの島々の色とりどりの野鳥のものだろうか。

見えない糸を手繰るように20年かけて紐解いた音絵巻。それは聴き手の想像力を激しく刺激する。見事だ。

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