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デビュー作をリメイクした御年85歳の艷 [ラテン]

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オマーラ・ポルトゥオンドの最新作「Magia Negra」の素晴らしさをどう伝えればいいんだろう。
うちにある彼女のアルバムはブエナビスタの流れでリリースされた2000年作だけ。あの時彼女はすでに70歳で、このおばあちゃん素晴らしいなぁと思ってたのが、それから15年経ってよりいっそう素晴らしいなんて。
85歳にしてはすごいとかその程度じゃないんですよ。

例えば「No Puedo Ser Feliz」で枯れた味わい深いデュエットを披露するのはイヴァン・リンス。
セサル・ポルティージョ・デラルス作「Noche Cubana」でデュエットするRossio Jimenezはよく知らない人だけど孫ほども年の離れた人だろう、しかしその二人よりオマーラのほうがずっとふくよかで艶やか。
歌の一節ひとふしにたっぷりと潤いがあり、思わず溜息が漏れてしまう。

本作は1958年の彼女のデビュー作をリメイクしたもの。
オリジナルは聴いたことがないけど、フリオ・グティエーレスがディレクターを務めたというからプログレッシブな内容だったのは想像に難くない。
冒頭そのデビュー作の音源に新しい演奏が被さって始まるタイトル曲(英題:That Old Black Magic)はハロルド・アーデン&ジョニー・マーサー作。他にもエリントンの「キャラバン」をやったり、キューバ革命の一年前ということもあるのかジャズ曲を取り上げている。
彼女は最初からキューバ音楽の王道というよりはフィーリンみたいなアメリカン・ミュージックの強い影響を受けた音楽を歌っていたのだろうか。
ソロ・デビューする前のなんて言ったかわすれたけど、グループ時代の歌を聴いたことあるけど、特別に印象に残るものではなかった。歌手って大きく分ければ二種類あって最初から完成されている人と時を経て完成される人。オマーラは年を経るごとに素晴らしさを増していった人なんじゃないだろうか。

本作でのバックの演奏はキューバン・ジャズ系の若手によるもの。キューバの若いミュージシャンは上手すぎて、どうも味わいに欠けるのでいまひとつ興味が持てないんだけど、ここではやはり主役が違えば違うというか。音楽監督を務めるのはサックスとフルートのフアン・マニュエル・セルート。録音も良くジャジーなホーンラインとエレガントなピアノがオマーラの歌の艷をより一層際立たせている。
スローなボレーロばっかりじゃなく「キャラバン」ではアフロ・ラテン炸裂のリズムにたゆたう様に歌をのせていく様が、んもーかっこよすぎる!年間ベスト級の傑作です。
もしまた来日してくれるならきっと聴きに行きたい。
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シャケ

オマーラの新作、出てたのは知ってたけど、そんなに良いとは!
しばらく彼女から離れてたんですが、記事を拝読して早速購入しようと思います。
オマーラは若い頃は技巧的な印象があり、老いてからのほうが女性的でフィーリングが増していますね。
ライヴは大阪の河内と東京と二度行きましたが、さすがのパフォーマンスでした。
by シャケ (2015-01-28 20:14) 

Astral

シャケさん

本作は枯れた味わいよりもバックの演奏の瑞々しさにものせられたのか、より艶やかな歌を聴かせてくれます。加齢によって歌がよれたり、リズムが甘くなったりということもなく、ここ最近の作品と比べることはできませんけど、素晴らしくって毎日うっとり聴いてます。

シャケさんが記事にされていたのは「アディオス」という作品のころでしたかね。あの時もライブに行こうかちょっと迷ったんですけど、アルバムも未購入だったので見送ったのでした。彼女はその後も都度都度来日してたようなので、邦盤リリースもあるようですしぜひ来日してほしいですね。
by Astral (2015-01-28 20:46) 

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