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アイデンティティは変更可能 [R&B/JAZZ/etc]

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12月にもなると海外にオーダーするとクリスマスが近いこともあって、やたらと到着までに時間がかかってしまう。ベスト10に入れたアルト奏者、ミゲール・ゼノンの新作「Identities Are Changeable」も届くまでに一ヶ月くらいかかってしまった。実はベスト10に選んだ時点ではまだ届いてなかったんです。まったく聴かずに選んだわけではなくて、2曲ネットで聴くことができたのでそれでこれはいいアルバムに違いない!と思っての選出でした。

「アイデンティティは変更可能」と題されたこの作品、冒頭のオーバーチュアと最後のアウトロの2曲を除く6曲はどれも10分を超える比較的長尺の作り。そしてどの曲にも所々でアイデンティティについてミゲール・ゼノンが身近な人たちにインタビューした音声が被さっている。
「父親はプエルトリコの何処其処で生まれて母親は何処其処出身で50年台にアメリカに来て自分はブロンクスで生まれたんだけど~」みたいなことや「First Language」という曲では「祖母はスペイン語しかできなくて、自分は英語を最初に覚えて~」とか、僕の英語力では細かいところまではわからないけど、編集されて音楽にうまくはめ込まれたその音声はどこかスポークン・ワード的に響いて面白い。

音楽的にはレギュラーカルテットにアイデンティティーズ・ビッグ・バンドと名付けられた12人編成のビッグ・バンドが付く。とにかくレギュラー・バンドの一体感が素晴らしく、そこに緻密に構成されたビッグ・バンドの編曲が聴きごたえがある。
アルトという楽器はテナーと比べるとどこかどっしりとした安定感に欠けるというかどこか不安定な印象を与える。刹那的というか、一匹狼的というか。うまく言えないけど。その不安定さが魅力の楽器なんじゃないかと思ってるんだけど。
ミゲール・ゼノンのアルトはその不安定さをあまり感じさせない、自分がどこに行くべきかちゃんと分かっているという安心感がある。こんなタイトルのアルバムを作るくらいだから真面目なんだろうな。技術的にもものすごく上手いし。ちょっと上手すぎかも。全曲自作で曲も本当に良く出来てる。出来過ぎかも。

今年は「ジャズ・ザ・ニュー・チャプター」だっけ?ロバート・グラスパーを中心に最近のジャズにスポットしたムック本がでたりして、最近のジャズが注目されたけど、個人的にはグラスパー周辺のブラコン的ジャズ?にはそれほど興味がない。ああいうのは要するにクインシー・ジョーンズとかデイブ・グルーシンみたいなもんじゃない?て思ってしまう。それはそれでいいんだけど、ジャズならではの醍醐味とかスリルとかを求める向きにはそれほど魅力的じゃない。

そんなわけで僕の手にするジャズというとアルトゥーロ・オファリルとか本作になってしまう。あまり注目されないのが残念だけれど、ここにはジャズならではのスリルとか醍醐味がちゃんとあります。
話がずれちゃったけど、結論としては2014年度ベスト10入選に異議なし。


こういうライブをピット・インあたりで見れるといいんだけどなぁ。

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